第77話 書物
「はあ・・・はあ・・・よう・・・走ってきたぞ。」
息を切らしながら光太郎が燃を見て言った。
「速いですね。大分この修行にも慣れてきましたか?」
燃は掲げた手を下げて言った。
掲げていた先には同じく息を切らしている美穂が立っていた。
「慣れはしないが、大分当たらないようになってきたぜ・・・」
そう言った後に光太郎は膝に手をついて深呼吸をした。
「そうですか・・・では、日も暮れてきていますので、今日はこの辺で上がりましょうか。」
燃は大きく伸びをしてそう言った。
「美穂も今日の特訓は終了だ。」
そう言って燃は小屋に向かった。
「え・・・?終わりなの・・・?」
あぐらをかいていた美穂は立ち上がった。
慣れてきたとはいえ、やはり特訓は辛いようだ。
「ああ、今日はこの辺にしておこう。」
そう言うと燃は小屋のドアを開け、中にはいった。
美穂と光太郎もそれに続き、小屋の中に入る。
全員疲れていたのだろうか。
三人は食事を済ませると、すぐに布団の中に入ってしまった。
ー午前2時ー
燃は眠そうにして布団から起き上がった。
「ふあ・・・そろそろ良いかな・・・?」
小さくあくびをして燃は部屋から出た。
部屋はいくつかあり、そのうちの3つをそれぞれ一部屋ずつ個室として使用している。
ぐっすりと眠っているのだろうか、二人の部屋からは全く気配がしない。
「よし・・・」
聞き耳を立てた後、燃はそのまま別の部屋に入った。
そこには小さなタンスと机しかなく、畳張りでいかにも和風の部屋だ。
燃は音を立てずにそのタンスに歩み寄り、自分のポケットから小さなカギを取り出す。
タンスの一番下の段の小さな鍵穴にそれを突っ込み、捻ると、カチャリと小さな音を立てて空く音がした。
ゆっくりとタンスの引き出しを開けると、そこには小さな本が入っていた。
いや、本というよりはメモ帳に近いだろうか。
燃はそれを割れ物のように丁重に取り出し、そのまま懐へしまうと引き出しを閉めて、その部屋を出た。