第75話 呼び方
「今日の光太郎さんの予定は昨日と同じコースを走ってきてください。光太郎さんはこれだけで相当強くなるはずです。」
「へいへい・・・どうせい、やだっつってもやらせるんだろ・・・?」
文句を言いつつも、光太郎は昨日と同じ道を歩いていった。
「美穂ちゃんは・・・」
「ちょっと一つ提案!!」
燃が予定を言おうとした瞬間、手を挙げながら美穂がそう言った。
「何?」
話を途中で止め燃は美穂の話に耳を傾けた。
かなり真剣な顔をしている。
「・・・その『ちゃん』って言うの止めて。なんか格下に見られているみたいでやだ。」
あまりのどうでもよさに燃は思わずこけそうになる。
「じ・・・じゃあ、君は何て呼んで欲しいの?」
呆れたように苦笑いをしながら燃が言った。
「呼び捨てで良いよ。そのほうが対等な感じがする。私もあなたの事呼び捨てで呼んで良い?」
「はあ・・・別に何でも良いよ・・・」
燃は大きくため息をついてからそう言った。
「そう?良かった。じゃあ、燃。続けて。」
美穂は笑顔でそう言った。
「じゃあ、美穂の今日の予定は俺がエネルギーの衝撃波を放って、それを素手で受ける・・・だな。」
美穂が驚いた顔をする。
「ち・・・ちょっと待って!!そんな修行したら私死んじゃうよ!!」
美穂は相当必死だ。
当たり前だ。
今まで剣で受けるのがやっとだったのである。
「昨日の戦いで君は圧縮のコツをもう分かっているはずだ。圧縮が出来れば俺の衝撃波を受けられるよ。」
そう言って燃は手を美穂の向かって掲げた。
「大丈夫だ。最初のうちはある程度手加減する。」
燃がそう言った瞬間、燃の手から赤い衝撃波が放たれた。
美穂は急いで気を収束すると同時にそれを圧縮し、両手を前に出した。
「くっ!!」
案の定、美穂は衝撃に耐え切れずに吹き飛んだ。
しかし美穂は吹き飛んだ痛みを気にしないですぐに立ち上がり、再び両手を前に出した。
「私、燃のこと嫌いになるかも・・・」
美穂はふざけた口調でそう言った。
「修行を受けてくれるならそれでも良いよ。」
そう言いながら燃は再び衝撃波を放った。
今度は準備が万全だったためか、美穂は吹き飛ばずに足で地面を擦っただけだった。
「へえ・・・すごいな・・・」
燃は感心するようにそう言った。
「まだまだ・・・本気じゃないんでしょ?」
美穂はにやりと笑ってそう言いながら顔をあげた。
「もちろん!」
そう言って燃は少し強めの衝撃波を放った。