第65話 燃vs美穂 2
「ねえ、もしかしてあの子も気を使ってるの?」
二人の戦闘を見ていたリンがそう言った。
「・・・そうだけど、何で?」
良平が答えてから訊く。
「相当な使い手?」
「ああ・・・そうだけど?」
リンがしばし考え込む。
「君の考えている通りだよ。」
俊平がリンに向かって言った。
「兄貴?どういうことだよ?」
意味が分からない良平は二人を交互に見合わせる。
「燃君は彼女に気を先に収束されてしまって気を上手く纏えないんだろうね。」
俊平が窓から二人を覗き込む。
今のところ燃が圧倒されている。
「やっぱり・・・」
リンが心配そうに燃を見る。
「心配ないよ。当たっても死なないだろうし・・・まあ、頭に受けたら危ないけど・・・とりあえず燃君なら大丈夫だよ。今はここでゆっくりと見物していよう。」
そう言ってにっこりと俊平は微笑んだ。
「くっ!!」
燃は美穂の攻撃を受け流し、受け流した勢いを殺さずに回転しながら美穂の皿を狙って横凪に木刀を振るう。
しかしその攻撃は美穂の木刀によって防がれた。
美穂はそのまま木刀をふるって燃を吹き飛ばす。
吹き飛ばされた燃は空中で態勢を立て直し上手く着地した。
着地したときにはもう遅く、美穂はすでに木刀を振るう態勢が出来ていた。
燃は木刀に左手を添え、右手木刀をしっかりと握り締めてその攻撃を受ける構えを取った。
「はあ!!」
美穂が木刀を思い切り振るい、二つの木刀がぶつかり合い、バチッという音とともに燃が弾き飛ばされた。
弾き飛ばされた燃は再び空中で態勢を変え、今度は塀に足を付けた。
そのまま燃は塀をけって美穂に突進する。
美穂は突進に備え、防御の姿勢をとる。
しかし燃は途中で地面に手をつき転ぶようにして美穂の目の前で転がった。
「あれ?」
一瞬、美穂は気を抜いてしまう。
燃はその状態のまま美穂の皿目掛けて突きを繰り出す。
「くっ!!」
間一髪で美穂はそれを避け、後ろに飛び下がった。
「これは・・・昨日の動き!」
美穂は思い出すようにしてそう言った。
「ああ、その通り。普通に攻撃しても勝てなさそうだからさ。」
そう言って燃は奇妙な構えを取る。
「その動きをされちゃうと私も勝てる気がしなくなっちゃうんだよね・・・」
美穂はそう言いながらさらに気を収束した。
「・・・・・・」
何か考え事でもしているのか、燃は黙って美穂を見ている。
美穂はそんなことにも気付かず、燃に向かって木刀を横凪に振るう。
燃はそれを防御するが受けきれないと悟ったのか、途中で腰を低くし、美穂の木刀を受け流した。
その勢いを止めずに燃は突きの構えを見せる。
「くっ!!」
美穂はその攻撃を悟り、構えの状態で燃の木刀を美穂の木刀で叩き落とす。
しかし木刀を叩き落されたにもかかわらず、燃は態勢を崩さずに掌底を美穂のさらに向かって放つ。
「なっ!?」
美穂は驚きつつも横っ飛びに転がり、それをギリギリでかわす。
そのまま燃は攻撃を止めず、落ちている木刀を美穂目掛けて蹴り上げた。
それを美穂は木刀で弾き返した。
燃はそれを受け取り、再び構える。
「な・・・何で?」
これにはさすがに美穂も驚いたようだ。
燃が構えを解く。
「君は一つ一つの動作に隙がありすぎるんだ。確かに先読みもある程度出来てるみたいだけど、それでもやっぱり隙が多い。」
分かりやすく燃は美穂に説明をした。
「だったら・・・これでどう!?」
そう言って美穂はさらに気を収束し始めた。
「!・・・待て!!それ以上やると・・・」
燃が止めようとするが、美穂はすでに集中状態に入っている。
辺りの気がどんどん美穂に集まっていく。
「ったく・・・こんな遊びでむきになりやがって・・・!!」
そう言って燃は美穂に向けて手をかざした。
一瞬、美穂は皿が割れる音とともに体全体の力が抜けた気がした。
「あ・・・」
美穂は思わず膝をつく。
「もう終わりだ。」
燃はそう言って自分の木刀を放り投げた。
美穂が自分の皿を見下ろすとそこには皿の破片しかなかった。




