第63話 泥棒
燃が手を開くと砕けた皿が地に落ちた。
「まじかよ・・・」
良平があっけにとられている。
やられた感じがしなかったのだろう。
「ああ、正真正銘、これはお前の皿だ。」
燃は手についた皿の破片を手ではらいながら、そう言った。
「お前に泥棒の趣味があったとは・・・」
「そっちかよ!!もうちょっと別のところで感心出来なかったのか?」
どうやら良平の言葉は燃にとって心外だったらしい。
完全に強さの方面で感心されていたと思っていたのだろう。
「いや、あのさり気なさはプロと思ってしまうほどだ・・・」
「言っとくけど泥棒なんてやってないからな?」
先に釘をさしておく。
「そういえば最近空き巣が多いんだよなあ?」
にやりと笑いながら良平が言った。
「何でそこでいきなり話が変わるのか、俺には理解しがたい。」
大体良平の言いたいことが分かっているのだろう。
睨みつけながら燃がそう言った。
「何、いがみ合ってるの二人とも?」
良平と燃の間にいつの間に入ってきていた美穂がそう言った。
光太郎とリンも校舎から出て燃達の方向に歩いてきている。
「何でもない。」
良平がそう言った。
「光太郎さんと良平とはもう戦ったから、後は君とだけか。」
美穂を見ながら燃がそう言った。
「そうだね。私勝ちたいから手加減してね。」
「・・・あらかじめ手加減して欲しいって言ってくる奴は初めてだ・・・」
燃は呆れた目で感心するように言った。
「そう言うことで明日はよろしく。」
そう言って美穂は手を燃に差し伸べた。
「はいはい・・・もういい加減に疲れてきた・・・」
そう言いながらも燃はその手を掴んだ。