第57話 燃vs光太郎 1
光太郎との対戦の日、燃は帰りの連絡が終り次第、すぐに学校を飛び出した。
木刀を買うためだ。
燃は木刀ぐらい用意してくれても良いのにと思いつつ、適当なところで普通の木刀を買った。
その日の夜、燃は木刀を持参し、学校へ向かった。
夜の学校、そこにはやけに気合の入った光太郎がいた。
「よう、来たか!!」
今準備体操が終ったようだ。
「光太郎さん、やけに気合入ってないですか?」
たかがゲームなのにと思いつつ、燃は訊いてみる。
「俺はたかがゲームでも本気でやるんだ。」
「・・・・・・そうなんですか。」
怪しいと思いつつ、燃は納得しておいた。
「そういえば皆は?」
周りを見渡しながら燃が言った。
辺りには燃と光太郎しかいない。
「皆はあそこの2階で見ているそうだ。」
光太郎はそう言って指で示す。
その方向を見ると確かに人影が見える。
「あ、そうだ。これつけろよ。」
そう言って光太郎は手のひらサイズの皿を燃に向かって投げた。
燃はそれを受け取り、胸の辺りに紐でくくりつけた。
光太郎もみぞおちの辺りにくくりつけてある。
「そういえば光太郎さん、木刀は?」
光太郎が手ぶらなのに気付き、燃が訊いた。
「ん?ああ、俺の木刀はこれだ。」
そう言って光太郎はナイフ程の大きさしかない木刀を取り出した。
「やっぱり使い慣れてない武器でやらないとな。」
光太郎が構える。
「そういうのもありですか・・・」
仕方なく燃が構えた。
一瞬、光太郎が消えた。
否、消えたように見えた。
とてつもなく速いのだ。
燃は横から気配を感じ取り、咄嗟に腕で受けた。
「バチッ!!」
「くっ!!」
大きな音がして燃が吹き飛び、転がる。
「いきなり本気ですか!?」
突然の攻撃に吹き飛ばされた燃が叫ぶ。
「当たり前だろう?一週間分の飯がかかってりゃあ本気にもなるさ。」
燃が知らないことを光太郎が言った。
「何ですって・・・?」
起き上がりながら燃が言った。
「いや、だから俺たちの中の誰かが勝てば一週間分の飯はお前のおごりでお前が勝てば俺たちが奢るって・・・言ってなかったか?」
「言ってるも何もそんな事訊いてませんよ!!」
「ん〜・・・じゃあ、今言った。これで良いだろう?」
なんと強引な人だろう。
「良いかって・・・ああもう、分かりましたよ!!だけどそれを訊いたからには俺も本気でやりますよ?」
そう言って燃は再び構えた。
この条件を取り消すのは不可能だと悟ったのだろう。
「ああ、その言葉を聞きたかった。」
光太郎は嬉しそうにそう言って構えた。