第56話 力試しの約束
「おう、燃。来たか。」
走ってきた燃とリンを見て良平がそう言った。
「何か用か?」
呼ばれてきた燃が良平に訊く。
「ああ、ちょっとお前に頼みがあってな。」
「頼み?」
「ああ。一回俺たちと戦って欲しいんだ。」
頷いてから良平がそう言った。
「戦う?何でまたいきなり・・・」
燃が片眉を上げて訊く。
「俺たちはまだ燃の実力を知らない。お前もそうだ。俺たちの実力を知らない。だからお互い知り合おうって・・・・・・師匠が。」
そう言って良平が呆れた顔をして親指で光太郎を示す。
美穂と俊平も呆れた顔をしている。
「やっぱり光太郎さんか・・・」
燃も呆れた顔で光太郎を見る。
「な・・・なんか悪いのかよ?俺、まともなこと言ってるよな?」
そう言って光太郎が皆を見回す。
目を合わそうとするが、全員が光太郎から目を逸らす。
「ま・・・まあ、とりあえずそう言うことだ、燃。よろしくな。」
光太郎が焦りながらそう言った。
とりあえず話を逸らすことにしたようだ。
「別に反対じゃないですけど・・・で?ルールは?本気でやったら死人が出るだろ?」
「ああ、ルールは簡単だ。お互い木刀を持ってこの皿を体のどこかにつけて割ったほうが勝ちだ。ちなみにこれはかなり割れやすいから気をつけろよ?ただしエネルギーは無しにしてもらう。気は使っていいけどな。」
良平が小さな皿を出して説明した。
「・・・・・・子供のチャンバラごっこみたいだな・・・」
ルールを聞いて燃がため息をつきながら言った。
「まあ、そう言うな。木刀は各自で用意。勝負は明日から一対一の一日1人。ただ、兄貴はやらないそうだ。」
後ろで俊平が笑顔で頷く。
「僕は戦闘は苦手なんでね。」
にっこりお微笑みながら俊平が言った。
「分かったよ。で?明日は誰だ?」
燃が皆を見回すと、手を挙げている光太郎が目に入った。
「やっぱり・・・」
呆れたように燃が言った。
「なっ!?違うってこれはちゃんとくじで決めたんだぜ!!」
光太郎が弁解する。
「本当ですかぁ?」
燃が疑いの目を向ける。
「本当だって。」
「・・・・・・まあ、いいや。じゃあ、明日木刀もってまたここにくるよ。」
そう言って燃は四人に背を向けた。
「ああ・・・・・・ってちょっと待て!!お前、妖退治俺たちに押し付けようとしてるだろ!?」
良平がそう言った時にはもう既に燃とリンの姿はなかった。