第55話 隠し事
「あっははははは!!」
誰も居ない夜の学校の校舎の前でリンの笑い声が響き渡る。
「何笑ってんだよ?ばれたらどうするんだって。何のために俺があの性格で学校に来ているのか分かってるのか?」
真面目な顔で燃が言った。
「うん。分かってるよ。『なるべく疑われないように目立たずに生活をして、もしものときに備えて学校を見張るため』でしょ?」
リンが笑顔で言う。
「分かってるなら何であんなに目立たせるような事をしたんだ?俺になんか恨みでもあるのか?」
「恨みって・・・別に恨みはないけど、燃にもっと学校を楽しんで欲しいなぁってね。」
「楽しんでほしいなぁって・・・お前どうしたんだよ?いきなり・・・」
燃は訳がわからないと言った顔をする。
「どうもしないって。別にいいじゃん、そんな事。」
そう言ってリンは燃に背を向けた。
妖の退治に向かうのだろう。
燃はリンの肩を掴み、自分の方向に体を向けさせた。
「なあ、お前何かあったのか?」
真面目な顔をして燃が言う。
「何かあった・・・訳じゃないけど、何て言うのかな・・・?」
リンは自分でも良く分からないのか、手を顎に当て、首かしげながらそう言った。
「・・・なんか、すごく嫌な予感がするの。絶対に無事じゃすまない・・・そんな予感がするの・・・」
前にも何処かで聞いた話だ。
燃は思わずそのときのことを思い出す。
「達也・・・」
突然、燃の表情が曇る。
「・・・どうしたの?燃。」
突然黙ってしまった燃を疑問に思ったのか、リンがそう言って燃の顔を覗き込む。
「あ・・・いや、その予感は良いことと悪い事の両方をもたらしそうだなって思ってさ・・・」
「燃・・・?」
言っている意味が分からないのか、リンが首をかしげる。
「いや、何でもない。まあ、その予感のことはあまり気にしなくてもいいんじゃないのか?とりあえず今は妖に勝つことを考えよう。」
「え・・・?でも・・・」
リンは燃の言葉に納得できないようだ。
「分かった・・・そんなに嫌な予感がするんだったら、俺は普通の学生の生活をするよ。これでいいんだろ?」
なにやら焦っているようにも聞こえる燃の言葉にリンは疑問を抱いているようだ。
「ねえ、燃。何か私に隠し事してない?」
リンがその言葉を口にした途端、燃の体が硬直した。
「か・・・隠し事?してない、してない。っと、良平が呼んでいるみたいだ。じゃあ、この話はまた後日!!」
そう言うと、燃はすごい勢いで良平のところへ向かって行った。
「燃!?・・・まったく・・・」
リンもその後に続いた。