第51話 連行
「そういえば学校の方ってどうなってんだ?健一は特殊部隊に任せたって言ってたけど・・・」
突然、燃は思い出したようにそう言った。
「ああ、そこら辺はちゃんと俺が本部に連絡してあるさ。抜かりは無い。」
良平が自信有り気に答える。
「でも特殊部隊って皆お前らみたいに改造されているって訳じゃないんだろ?どうやって戦うんだ?」
ずっと疑問に思っていたことを燃は良平に訊いた。
「改造?ああ、そうか、兄貴に聞いたのか。だったら兄貴の素性は知ってるだろ?それでその技術で特殊な武器を作ってそれを皆に配ったんだ。もちろん、訓練してからな。」
「ああ、なるほど・・・訓練かあ・・・大変なんだろうなあ・・・」
何か嫌な思い出でもあるのか燃は突然暗くなった。
「何言ってんだよ。お前だって過酷な訓練ぐらいやらないとそこまで強くはなれないだろう?」
良平は気楽にそう言った。
「過酷な・・・」
良平は隣を見ると顔が青ざめている燃の姿が目に入った。
「ね・・・倉田!?どうした?」
慌てながら良平はそう言った。
「い・・・いや、辛い日々を思い出してしまってな・・・」
頭を抱えながら燃がそう言った。
「は?」
良平が思わず聞き返す。
「いや、だから・・・師匠との修行を思い出しただけだ・・・」
首を振りながら燃がそう答える。
「お前・・・」
呆れた目で良平は燃の事を見た。
「・・・・・・」
燃は黙って顔を伏せている。
「・・・・・・同情するよ。」
「え?」
予想外の返答だったのか、燃は思わず顔を上げた。
「俺だってあの師匠だぜ・・・もう戦いの連続で・・・」
良平は涙を流しそうな顔をしてそう言った。
「・・・そうだよな。やっぱり修行って辛いよな・・・?」
同じく燃も泣きそうな顔でそう言う。
「ああ!」
そう言って良平は手を差し伸べた。
「良平・・・お前だけは真の友だ!」
燃はそう言ってその手をがっちりと握った。
「で?もう前置きはいいかな?」
二人が手を握り合っている真ん中で呆れた顔をした美穂がそう言った。
「い・・・いや、もう少し待ってくれ・・・」
良平が戸惑いながらそう言った。
三人は今お化け屋敷の前で立ち止まっている。
修学旅行で遊園地にきているのだ。
「これ以上時間稼ぎしても仕方ないでしょ。」
そう言って美穂は良平の手を握り、お化け屋敷に向かって歩き出した。
「ちょっ!お前、待てってこら!くそ!道連れ!」
そう言って良平が燃の手を再び掴む。
「なっ!お前、裏切り者!」
燃は手を振り解こうとするが、良平はしっかりと手を握っている。
「「ちょっと待てって!放せ!はなせぇええええ!」」
二人のこの声はしばらくしないうちに恐怖の叫び声へと変わっていった。