第50話 悩み
「どうした?信吾。顔色が悪いぞ?」
良平の待っている場所に戻ると良平が燃の顔色を窺いながら言った。
「え?ああ、何でもない。」
「あんまり良い話じゃなかったのか?」
良平が耳元で囁く。
「ああ、まあそんな感じだ。」
元気無さ気に燃が言った。
「そうか・・・」
良平はそれ以上追及しなかった。
「悪い・・・今日は別行動でいいか?」
燃は適当にそこら辺にある公園のベンチに座り、空を見上げた。
「はあ・・・」
大きなため息をつき、燃は太陽に自分の手をかざす。
「俺だって自分の体のことぐらいは分かっているさ・・・」
燃は呟くようにしてそう言った。
公園では小さな子供達が楽しそうに走り回り、空には小さな鳥達がじゃれ合うようにして飛んでいる。
ゆっくりと立ち上がった燃は当ても無く歩き出した。
途中の自動販売機でジュースを買い、京都タワーの展望台へ向かった。
特に行きたいというわけでもなく、ただ目に入ったからである。
燃はお金を払い、展望室に入った。
「綺麗だな・・・」
一言、燃はそう言った。
京都は綺麗な町であったが、高いところから見るといっそう綺麗に見える。
「あっ、ね・・・じゃなくて、倉田!」
燃がその声を聞いて振り返ると、そこには秋葉原竜太の姿をしたリンとその他5人ほど居た。
リンはその他5人に先に行って良いと言い、燃の近くに近寄ってきた。
燃はリンにかかっているエネルギーを解き、秋葉原竜太の顔をリンの顔に戻した。
それにリンは気付き、頭につけていたかつらを取る。
「どうしたの?こんな所で・・・」
リンは意外そうな顔をして言う。
「ちょっと・・・自分が分からなくなってな・・・」
燃は外の風景を見ながら、真面目な顔で言った。
「・・・・・・ぷっ、あっははははは!!」
リンはしばらくした後、突然大きな声で笑い出した。
「なんだよ・・・俺は真面目に言っているんだぞ?」
照れくさいのか、不機嫌な顔で燃は言った。
「だ・・・だって、自分が分からなくなるって、くさすぎるよ燃。」
涙を拭きながらリンはそう言った。
「で?どうしたの?何か悩み事でも?」
リンは真面目な顔をしてそう言った。
「いや、この風景やさっきの公園に居た子供達や鳥を見て思ったんだ。この世界を壊しちゃいけない。こんなに綺麗な世界を壊されてたまるか!!ってな。さっきは真正面から向かって言われたから混乱していたんだな・・・俺はこの世界を守る!!これだけを考えとけば良かったんだ。」
外の夕焼けを見ながら燃は心のそこからそう言った。
「どうしたの?今さら。」
リンが首をかしげながら言う。
「いや、何でもない。・・・そろそろ帰るか?」
出口を指で指しながら燃がそう言った。
「うん。そうだね。」
リンは笑顔で頷いた。