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  作者: 水野 すいま
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第5話 夜の学校

「うわ・・・夜の学校ってこんなに恐いんだ・・・」

洋子は一人で呟いた。

辺りは既に暗く、学校の周りに生えている木には烏が止まり、鳴き続けている。

さらに今、洋子の前を黒猫が横切っていた。

「こわい・・・というか、なんか不吉な感じがする・・・」

洋子はそんなことを言いながら学校の中へ入っていった。

階段を上るとそこには暗い廊下が続いていた。

洋子はそこをしばらく歩き、教室の前へ来た。

洋子は教室のドアを開けた。

教室の中には大きな黒い熊みたいなものがごそごそと動いていた。

その大きさは2メートル以上はあるだろう。

「な・・・ああ・・・あれは・・・何?」

洋子はかなり動揺していた。

その熊みたいなものは鋭い爪を持っている左手を振り上げた。

「!!」

洋子はその瞬間死を覚悟し、思わず目をつぶった。

だが、しばらくしても痛みはこなかった。

洋子は恐る恐る目を開けてみると、そこには熊の手を抑えている健一の姿があった。

「大丈夫か?」

健一は熊を投げ飛ばしながら言った。

熊は吹っ飛び、床に叩きつけられた。

「あ・・・その手・・・」

洋子は健一の手を指で指した。

「ああ・・・これか・・・」

健一は恐竜のような鉤爪をつけている右手を持ち上げて言った。

熊は起き上がり、再び健一に襲い掛かった。

健一は熊の爪をよけ、右腕を振るって熊の体を引き裂いた。

「よし。じゃあ、お前は帰れ。そして今日のことは忘れろ。以上、さらば。」

そう言って健一は洋子の前から去ろうとした。

「なっ!?ちょっと健一君!?この状況説明してくれないの!?」

洋子は立ち去ろうとした健一の手を引っ掴んで言った。

「お前・・・俺が恐くないのか?」

健一は人間の手ではない健一の手を握っている洋子を驚いた目でみながら言った。

「健一君さあ・・・なんで助けてくれた人を恐がる必要があるの?」

洋子は呆れたように言った。

「だって俺人間じゃないんだぞ!?普通は恐がるだろ?」

「じゃあ、猫とか犬も恐がらなきゃいけないんだ?人間以外だもんね。」

「くっ・・・」

健一は1歩後ろに引いた。

「健一君の言っていることはそういうことだよ?自分で言ってておかしいと思わないの?」

洋子が1歩前に出た。

「分かった、分かったから・・・」

健一はなだめるように言った。

「で?あの状況は何なの?」

洋子は床に座りながら言った。

「え〜とだな・・・まずあいつはあやかしって言う・・・まあ・・・何と言うか、別の世界からやってきた怪物?」

健一は熊を指差しながら言った。

「別の世界?」

洋子は健一の言葉に疑問を抱いた。

「ああ・・・1年前の事件は覚えているよな?空に大きな裂け目が出来たやつ。」

「うん。」

「あれはどうやら他の次元と繋がっていたみたいでな・・・20の町の人間が死んだのもそれと関係していたみたいだ。」

健一は深刻な顔になって話し始めた。

「それで、何故かは分からないが一度は閉じたんだ。・・・だが、最近になって奇妙な事件が起こり出した。」

「事件?」

洋子が言った。

「ああ・・・人間がどんどん行方不明になっていくんだ。・・・で、その原因はこいつらが食っていたと、そういうことだ。」

「成る程・・・」

「ほい、終わり。じゃあ、帰れ。」

健一はごまかすように言った。

「ちょっと待ってよ。それじゃあ、健一君のその手のことが分からないじゃない。」

健一の体がびくっと動いた。

「話さなきゃ駄目か?」

「うん。」

健一は床に座り、口を開いた。

「まずな、さっきの話の続きなんだが、その妖のこともだんだんと国も感づいてくる。」

「うん。」

「そうすると国も法律がどうとか言ってられないからな。その妖を何頭も殺した。」

「うん、うん。」

洋子は興味を示したのか、身を乗り出した。

「その妖たちのいくつもの死体からDNAを抜き取った。そしてそのDNAと人間のDNAを組合して出来たのが、俺だ。まあ、つまりは妖対策に俺を作り出したってことだ。」

「・・・っていうと・・・健一君は・・・妖?」

洋子は首をかしげながら聞いた。

「まあ・・・そうとも言えるし、人間とも言える。」

「ふ〜ん・・・そういえば何でこの学校に来たの?」

洋子は面白そうにそう言った。

「ああ・・・それはだな、この町が一番妖の被害数が少なかったから・・・というか無かったから。」

「何で?一番多いところに行くんじゃないの?妖対策なんだから。」

洋子は不思議そうに聞いた。

「妖はもう既に全国に広まっている・・・まあ、そっちは国が何とかしてくれる。で、その全国に広まっている中でこの町だけが無事なんだ。」

健一は面白そうに笑っている。

「それが何かあるの?」

洋子はまだ分からないといった風だ。

「何も起こっていないというのは変だろう。・・・これは妖がひいきしているか、妖を片付けているやつが居る、としか考えられない。・・・まあ、前者はありえないけどな。」

「何が言いたいの?健一君。」

「・・・いいか、もう一回言う。俺が探しているものは荒木燃とエネルギーの使い手だ。俺はここで妖を片付けているやつはエネルギーの使い手だと踏んだわけだ。」

健一は笑いながら言った。

「ああ・・・成る程ね。」

洋子もようやく納得がいったように頷いた。

その瞬間、熊が洋子の真後ろで再び立ち上がった。

「しまった・・・!!」

健一は叫んだ。

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