第49話 俊平の真実
「改造って・・・嘘だろ?」
燃が驚いたように言う。
「嘘じゃないさ。彼がそうしてくれと僕に頼んだからそうしたまで。あ、もちろん光太郎さんもね。」
表情を変えずに俊平が言う。
「で・・・でも、どうやって?」
「ああ、それは簡単なことさ。妖のDNAをそれぞれの足に移植したのさ。」
「でも、今の技術でそんなことしたら・・・」
「その通り。今の技術でそんなことしたら確かに拒絶反応が起こるだろうね。だけどそれが今の技術じゃないとしたら?」
俊平が不気味な笑みを浮かべる。
「・・・・・・あんた、何者だ?現代では不可能なことをするし、さらに結界まで張る・・・こんなこと常人じゃ出来ない。」
燃は警戒態勢をとりながら言う。
「それが僕に対する君の質問かい?」
「ああ。」
睨みつけたまま燃は答える。
「じゃあ、答えよう。僕の本名はカイ。覚えているかな?一年前に君たちに捕まえられた、向こうの世界の住人だ。」
「!・・・あの時捕獲した・・・?」
燃は驚いたように言う。
「ああ、そうだよ。思い出してくれたみたいだね。」
俊平はにっこりと微笑む。
燃はさらに警戒を強めた。
「待ってくれ。恨んでなんかいないさ。もともとは僕もシン大将の政策に反対だったからね。」
慌てたように俊平が言った。
それを聞いて燃は安心したように警戒を解く。
「それじゃあ、話を続けるよ?・・・君たちに捕まえられてからしばらくして君たちがいなくなった。それを機に僕は隠し持っていたナイフで縄を解き、抜け出したんだ。」
警戒を解いた燃はベンチに座って聞くことにした。
「僕はもう一度元の世界に戻ろうとしたんだが、君たちに通信機を取られて戻る手段がないことに気づいてね、とりあえずガスマスクでも探そうと走り回ったんだ。」
一つ一つ思い出すようにして俊平が語る。
「無我夢中で探してて気付いたら町の外れまできててね。もう死を覚悟したよ。」
俊平は目を閉じていった。
「でも、嬉しいんだか悲しいんだか良く分からないけど君たちが勝ったみたいで、僕は生き残った。がむしゃらに走ったのがよかったのかな?それでその後、良平に拾われたって訳だ。これで大体分かったかな?」
「なるほど・・・でも良平の家族にはなんていっているんですか?」
味方だとわかり、燃は言葉を敬語に戻していった。
「彼には家族はいないよ。」
「え?」
驚いたように燃が言った。
「良平は昔、交通事故で両親を無くしていてね・・・居ないらしいんだ。まあ、その代わりが光太郎さんなんだけどね。光太郎さんは彼の父の友達だったらしいよ。」
「そ・・・そうだったんですか・・・」
燃は申し訳無さそうに言った。
「気にすることはないよ。良平は今でも幸せそうだから。」
そう言って俊平は優しく微笑んだ。
「そうですか。色々と話をありがとうございました。じゃあ、俺はこれで・・・」
そう言って燃はその場から逃げるようにして去ろうとした。
「あ、待ってくれ。まだ僕の話が終ってないだろう。」
俊平はすぐに引き止めた。
「あまりよくない話ですか?」
燃は振り返らずに聞いた。
「ああ。はっきりと言っておいた方がいいと思ってね。」
俊平は真面目な顔をして言った。