第48話 俊平の話
説教の後、疲れのあまり三人ともすぐに寝てしまった。
だが、寝てから約2時間後の午前4時、苦しそうに燃が飛び起きた。
そしてそのまま洗面所に向かって走り出すと、そこで一気に血を吐き出した。
「げほっ、ごほっ・・・はあっ・・・はあっ・・・」
少し落ち着くと燃は苦しそうに息をした。
洗面台はあっという間に血の色に染まった。
「ふう・・・やっぱり酷くなってるか・・・」
落ち着いたところで燃はため息をつきながら言った。
「あ、そうだ。燃、兄貴がお前にちょっと話があるってよ。」
突然良平が思い出したようにそう言った。
「ん?ああ、分かった。丁度俺も話があったんだ。」
燃は振り返りながらそう言った。
修学旅行の自由時間に燃と良平は良平の兄、黒田俊平との待ち合わせ場所に向かった。
俊平は待ち合わせ場所の噴水の近くのベンチに腰をかけている。
良平はナンパしに行くなどと言って何処かに行ってしまった。
「やあ、燃君。普段はそういう顔してるんだ?随分さえない顔をしてるんだね。」
燃を見て俊平はそう言った。
「ああ、これは目立たないようにしているんですよ。それで、話って何ですか?」
倉田信吾の顔のことを言っていると燃は悟り、訳を話してから聞いた。
「いや、そっちからでいいよ。どうせい君も僕に話があってきたんでしょ?」
俊平はにこやかにそう言った。
「え?あ・・・まあ、そうですけど・・・」
戸惑いながら燃はそう言った。
「先に話すのはどうも苦手でね。君の話を聞いてから僕も話すことにするよ。まあ、とりあえずそんなところで突っ立ってないで座りなよ。」
俊平はベンチの脇を指で指しながら言った。
「じ・・・じゃあ、まず良平の能力についてですけど、あれは人間業じゃないですよね?気を使ってもあそこもで早くなるのは不可能です。あいつはどうやってあの能力を手に入れたんですか?」
「何でそんな事?本人に聞けばいいじゃないか。」
俊平が不思議そうに聞く。
「いや、本人には聞きにくいじゃないですか。何か暗いところがあったら悪いし・・・」
燃は焦りながら言う。
「ふ〜ん。まあいいや。良平の能力は僕が改造したものだ。」
しばらく燃の耳には何も入ってこなかった。
「え?」
しばらくしてようやくその一言だけ喋れた。