第44話 新たなる仲間
「確かに強かったな・・・こいつ。」
良平の師匠は既に動かなくなっている燃を見下ろしながら言った。
燃の体のあちこちに傷がある。
「師匠、約束は果たした。今度は俺のお願い、聞いてくれるんだよな?」
血の滴り落ちるナイフを握りながら良平は言った。
「ああ、もうこいつの実力は分かったしな。お前らの手伝いをすれば良いんだろ?」
ナイフをしまいながら良平の師匠が燃と良平を指で指しながら聞く。
「ああ。ありがとな、師匠。」
良平は微笑みながらそう言った。
「いいって。それよりその妖の世界ってのは異世界にあるんだろ?だったらその世界全てを破壊しなきゃいけないんじゃないのか?」
「あ、それは・・・」
「その点についてはちゃんと考えてあるから安心していいよ、おっさん。」
良平が何か言おうとした瞬間、気絶しているはずの燃の声が二人の耳に入った。
「なっ!燃・・・お前、いつから起きてた?」
驚いた表情をした良平が燃に聞いた。
良平の師匠も驚いた表情をしている。
「最初からだよ。・・・っと、いてて・・・おっさん、力を見るんならもう少し手加減してくれよな・・・」
傷の様子を見ながら燃が言った。
良平の師匠は納得がいったように笑った。
「なるほどな・・・試されたのは俺たちか・・・いつから気づいていた?」
「ん〜・・・最初の攻撃を食らったとき。あのときに殺気を感じなかったからなあ・・・」
燃は少し考えてから言った。
「やっぱりお前には敵わないな・・・」
会話を聞いていた良平が肩をすくめながら言った。
「待てよ・・・・・・ということは荒木。お前本気を出してないってことか?」
良平の師匠は何かに気づいたようにそんなことを言った。
「え?ああ・・・まあ、そういうこと・・・って、どうした?」
燃は怪しく笑う良平の師匠をみて怪訝に思いながら聞いた。
「よし。構えろ荒木。」
そう言って良平の師匠はナイフを構えた。
「は?お・・・おい、どういうこと?」
隣にいる良平に燃は尋ねた。
「そういえば紹介がまだだったな。」
一歩ずつ燃から遠ざかりながら良平は言った。
「向こうにいるのが俺の兄貴の黒田俊平。主に俺たちの戦いで一般人に被害が及ばないように『結界』というものを張っている。」
良平は向こうの方にいる男を指で指しながら言った。
「そしてこの人がさっきも言ったとおり俺の師匠で名前は吉村光太郎。・・・・・・大の戦闘好きだ。強いやつを見るとすぐに戦いたくなるらしい・・・」
数メートル離れたところで良平は止まった。
「まっ、そういうことだ。よろしく頼むな。」
爽やかに笑いながら光太郎はそう言った。
「・・・・・・まじかよ。」
燃はがっくりと肩を落とした。