第43話 怒り
「し・・・師匠?」
燃は先程聞いた言葉をもう一度繰り返した。
「よお、良くやったな馬鹿弟子。これで荒木燃が捕まえられる。」
その男はにやりと笑いながら言った。
「なっ!?ちょっと待てよ。俺は荒木燃じゃ・・・」
「うるせえ!!お前が荒木燃だって言うことはその顔見ればわかるだろうが!!お前はこいつに騙されてたのが分からなかったのか?」
その男はそう言って良平のことを指で指した。
「何・・・だと?」
燃は良平の方を振り返った。
そこには申し訳無さそうにうつむいている良平の姿があった。
「良平・・・嘘だろ?」
「・・・・・・」
良平は無言のままうつむいているだけだ。
「これで分かったろ?大人しく捕まれ。荒木燃。」
そう言ってその男は燃に一歩近づいた。
「・・・・・・」
燃は相当ショックだったのか、その場で固まっている。
その男がもう一歩近づいた瞬間、燃は左足を軸にして後ろ回し蹴りを放った。
それをギリギリで避け、その男はバックステップで燃から距離を置いた。
「良く分かった・・・」
燃は良平を見ながら言った。
その形相は恐ろしく、いつもの燃からはとうてい想像できない。
良平はさっきを感じたのか顔を上げた。
「へえ・・・なかなか恐い顔するじゃねえか。」
良平の師匠はそう言って二つのナイフを両手に持って戦闘体制を取った。
「どうした良平・・・構えないと死ぬぞ。」
そう言って燃は赤いエネルギーのオーラを纏った。