第42話 失敗
「よ〜し、それじゃあ、解散!それぞれで行動してくれ!」
先生はそう言うとパチンコ屋に入っていった。
「よしっ!行くぞ倉田!」
良平はそう言うと、京都の町に向かって走り出した。
燃もその後に続く。
「くそ・・・こいつがあんなにしつこい奴だとは思わなかった。」
良平の後姿を追いながら燃は独り言を呟いた。
「で、良平。ナンパってどうやるんだ?」
ずっと思っていたことを燃は口にした。
「お前、まさかナンパした事がないのか?」
驚いたように良平が言った。
「ああ、まあな。そんなことしている余裕なかったし・・・」
今までの生活を思い出しながら燃は言った。
「ナンパって言うのはな、こうやって・・・」
良平はそう言って辺りを見回した。
そして誰かを見つけたのか、急ぎ足で歩いていった。
「ねえ、君。俺たちとどっか遊びに行かない?」
学生服を着た少し可愛めの女の子に良平は声をかけた。
「うちのこと?すんまへん。この後用事があるんで・・・」
あっさりと断られた。
「ま・・・まあ、ナンパって言うのはこんなもんだ。」
良平は頬に汗をかきながら言った。
その後、9回挑戦し、9回とも失敗に終った。
「ま・・・まあ、落ち込むこと無いって。ナンパってのはこんなもんなんだろ?」
元気付けようと笑いながら言った。
「いや・・・ここまでは・・・」
さらに落ち込んだようだ。
「そ・・・そうか・・・」
何を話していいのか分からず、燃は黙ってしまった。
しばらく歩いていると二人は人気のない場所に出た。
燃はずっと遠くに居る二人の男が燃の方を見ているのを発見した。
一見、不良のようにも見えたがそこまで悪そうでもない二人組みだ。
「どうした?」
声のしたほうを見ると良平が心配そうに燃の顔を覗き込んでいる。
「あ、いや・・・あそこの二人組みと目が合ってさ。」
そう言って燃は二人組みの居る方向を指で指した。
「二人組み?どこに居るんだ?そんなの。」
その言葉を聞いて燃は先程二人組みが居た方向を振り返った。
そこには先程の二人組みの内の一人しか居ない。
辺りを見回しても特に見当たらなかった。
「あれ・・・?さっきまであそこに・・・」
燃は途中で言葉を止めた。
否、止められた。
背中にはナイフの切っ先が当てられている。
「よお・・・お前、荒木燃か?」
後ろには先程の二人組みの居なくなった方がいた。
「いや、多分人違いだと思いますけど・・・?」
燃は一応とぼけてみた。
「そうか、それは残念だ。」
男はそう言って燃の背中を思い切り蹴り飛ばした。
「がはっ!!」
燃は前のめりになり、2メートルほど転がった。
「っかは・・・ごほっ!げほっ!」
口に手を当て、燃はその場で咳き込んだ。
「倉田!!」
良平は燃の側へ駆け寄った。
「いきなり何してんだよ、師匠!!」
燃は思いもよらぬ言葉を聞き、驚いた表情で良平の顔を見た。
そこには真剣な顔をした良平の顔があった。