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  作者: 水野 すいま
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第4話 写真

その日の授業が終わり、ホームルームも終わってからようやく健一は顔を出した。

「健一君、授業サボっちゃ駄目だよ。」

洋子は健一を睨む。

結局健一はあの後からずっと姿を見せなかったのだ。

「まあ、良いじゃねえか。あんまり気にするな。」

健一は洋子の目の前でひらひらと手をぶらつかせた。

明らかに挑発的な態度だ。

「全く・・・で?一緒に帰るんでしょ?早く行こ。」

呆れたようにそう言うと、洋子は教室から出て行った。

「はいはい・・・」

健一もそう言って洋子について行った。




ー数十分後ー

「なあ、まだ着かねえのかよ・・・」

健一は文句ばかり言っていた。

見た目よりも面倒くさがりのようだ。

「もう・・・少しは静かにしてもらえないかな・・・」

洋子は歩きながら首だけ振り返って言った。

「後どれくらいだよ・・・?」

「もうすぐ。」

そう言って洋子はまたすぐに前を向いて歩き出した。

「・・・ったく・・・」

文句を言いながらも健一は再び歩き出した。

「はい、着いたよ。」

洋子が振り返りそう言ったときにはすでに健一は家のドアを開けようとしていた。

「ちょっ!?健一君!?何やってるの!?」

驚いて健一に近づくと、洋子は急いで健一をドアの前からどかした。

かなり無遠慮な態度だ。

まるで自分の家であるかのように。

「もう疲れちまったんだよ・・・早く開けてくれ・・・」

健一は死にそうな声で言った。

「・・・・・・はいはい・・・」

洋子は呆れた風に言うと、カギを開けてドアを開けた。

そしてそのまま何もいわずに玄関の中に入っていく。

「あれ?お前両親は?」

健一は気づいたように言った。

普通家の中に誰か居たら、まずその人に断ってから入るものだ。

「両親は死んじゃって居ないんだ。お金はおじさん、おばさんが仕送りをしてくれてる。だからこの家には私一人だけ。」

洋子は振り向いていった。

その顔には曇りは全く無かった。

しかしやはり無理をしているのだろう。

「そうか・・・悪いこと聞いたな・・・」

健一は深刻な顔で言った。

「ううん、気にしないで・・・はい、どうぞ。」

洋子は健一を招きいれた。

「はいよ。お邪魔します、と」

靴を脱でからそう言うと、遠慮するそぶりも無くその家の中に入っていった。

「え〜と・・・じゃあ、とりあえず私の部屋においでよ。といっても全部私の部屋みたいなものだけどね・・・」

洋子はそう言うと2階に上がっていった。

辺りを見回しながら健一も後について行った。

家の中はとてもきれいで全く散らかっていなかった。

洋子と健一は実に女の子らしくない簡素な部屋に入っていった。

「へ〜。お前、全っ然女の子らしくないんだな。」

健一は感心したように言った。

その瞬間、蹴りが飛んできた。

避ける間もなくその蹴りを顎にまともにくらい、健一は思い切り後ろにひっくり返った。

「な・・・何すんだよ・・・」

あごを押さえながら健一は涙目になりながら言った。

「健一君・・・知ってるかな・・・?世の中には言って良いことと、悪いことがあるんだよ?」

洋子は笑いながら言った。

確かに顔は笑っているのだが、目は笑っていなかった。

「は・・・はい・・・すみません・・・」

恐ろしさ故、健一はそう答えるしかなかった。

女は怒らせると恐い。

よく使われる言葉だ。

「よろしい。」

洋子は棚の方に向かい、何かを探し始めた。

「何探してんだ?」

健一は洋子の行動が気になったので聞いてみた。

「燃の写真が欲しいんでしょ?それを探してあげてるの。」

洋子は色々な場所を探しながら答えた。

「おお・・・成る程・・・ところでお前って荒木燃とどういう関係だ?」

ずっと気になっていたのか、興味津々な表情で洋子に訊いた。

「え?・・・え〜と・・・まあ、幼馴染ってとこかな?」

洋子はかなり戸惑いながら答えた。

ちなみに作業をしていた手は完全に止まっている。

「ほ〜う。」

健一が面白そうに言った。

「あっ・・・!!・・・あったよ。最近のはこれかな?」

誤魔化すようにしてそう言ってから洋子は白いアルバムを取り出してきた。

そこにはクラス集合写真があった。

「この一番左の人が燃だよ。」

洋子は指で指しながら言った。

他の人と特に変わった様子も無く、いたって普通の学生だ。

「・・・こいつか・・・じゃあ、これは貰ってくからな。」

健一はそう言って立ち上がった。

「帰るの?」

「ああ、まあそんなとこだな・・・っと、そうだった。絶対に夜の学校には近づくなよ?」

突然思い出したように健一が言い出した。

「何で?」

「どうしてもだ。」

洋子が不思議そうに答えると健一はいい加減に答えた。

「じゃあ、そういうことで!お邪魔しましたあ!!」

健一はそう言って、ものすごい勢いで走っていった。

何か秘密でもあるのだろうか。

「・・・・・・あっ、学校にノート忘れちゃった・・・」

健一を無言のまま見送っていると、洋子はふと思い出したように言った。

「明日の宿題なんだよねえ・・・」

洋子は健一の言っていたことを思い出した。

もうすぐ日が落ち、夜になる。

しばらくして洋子は決心をした。

「よしっ!学校に行こう!」

洋子は走って学校に向かっていった。

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