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  作者: 水野 すいま
37/124

第37話 退却

「そろそろ退くか・・・」

健一は空を見上げながら言った。

「は・・・?」

良平はあまりの言葉に唖然とした。

普通ならば自分が優勢のときに退いたりはしない。

まさにその有利な状況で健一は先程の言葉を言ったのである。

「お前・・・訳がわかんねえぞ?」

良平は自分のことを馬鹿だと思いながらも健一に向かって言った。

「お前は後ろを見ていないから、わかんねえんだろ?」

健一に言われ、良平は後ろを向いた。

そこには前にうなだれながら立ち上がっている荒木燃の姿があった。

荒木燃は既に瀕死のはずなのにすさまじい殺気を放っている。

「これは・・・」

良平は驚いたように燃を見ている。

「逃げた方が良いだろ?」

健一はそう言って何もないところで剣を振るった。

するとそこの空間に歪みができ、奥には赤黒い世界が広がっている。

「お〜い!帰るぞ!!」

洋子はその声を聞いて戦闘を止め、健一の居るところへ行った。

サイボーグの美樹もいつの間にか健一の隣に居る。

「それじゃあ、また来るからそん時にはまたよろしくな。」

健一はにやりと笑いながら言い、空間のゆがみの中へ消えていった。

「はあ・・・」

今まで息をしていなかったかのように良平は大きくため息をついた。

後ろを見ると荒木燃もその場で座り込んでいる。

「よう、その怪我でよく生きていられるな。」

気が抜けたのか大の字に寝っ転がりながら良平は燃に話し掛けた。

燃の体は刀傷などでボロボロになっていた。

「まあな・・・エネルギーの使い手の生命力は相当すごいらしいからな・・・」

そう言って燃も大きく寝っ転がった。

「そんなに隙を見せちまって良いのか?俺はお前の監視をしに来たんだぞ?」

「別に・・・殺したかったんなら助けになんて来ないだろ。それに今の俺に反撃する力は残っていない・・・」

寝っ転がったまま燃は返答した。

「嘘つけ。お前、まだ何か力を隠しているだろう。さっきの殺気はすごかったぞ?一体何をやろうとしたんだ?」

「秘密だ。使わなければならない時が来たら使うさ。」

燃はニヤリと力なく笑いながらそう言った。

「そうか・・・」

良平も疲れたのかゆっくりと目を閉じる。

その瞬間、何かがすごい勢いで良平の顔面にぶつかった。

「ぶほっ!!」

良平から変な声が発せられた。

「お兄ちゃあああああん!!」

美穂が良平の胸座を引っ掴んだ。

「死んじゃ嫌だよおおおおお!!」

良平の胸座を引っ掴んだまま思い切り縦に揺さぶる。

「起きてええええ!!」

ものすごい勢いの往復ビンタが良平を襲う。

しばらくすると美穂は燃の方に顔を向けた。

「あっ、こんにちは・・・じゃなくてこんばんは荒木燃さん。私は黒田良平の妹の黒田美穂です。以後お見知りおきを。」

ようやく開放してもらえた良平はまるで死んでいるかのように倒れている。

「あ・・・おう、よろしくな。」

燃は良平を心配するように見ながら挨拶を返した。

「お、お前・・・いきなり何すんだよ・・・?」

ゆっくりと起き上った良平は美穂に文句をつけた。

「だって死んじゃったかと思ったんだもん。」

美穂はにやりと笑いながらそっぽを向いた。

「目を閉じただけで死んだと思う馬鹿がどこに居るんだよ・・・」

良平は呆れたように呟いた。

「あの・・・じ・・・じゃあ、とりあえずお前らは味方なのか・・・?」

二人のやり取りに戸惑っていた燃は口をはさんだ。

「味方じゃなかったら助けに入らねえって。」

「そうだよ!」

二人は燃を見て笑いながらいった。

「そうか・・・じゃあ、とりあえずよろしくな。」

燃はそう言って手を差し伸べた。

「ああ。」

良平は微笑を浮かべながらその手を握った。

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