第35話 助っ人
剣を振りかぶった健一は剣を振り下ろす寸前で何かに気づき、振り向きざまに剣を振るう。
ガキィンと言う音がして何かが健一の剣によって弾かれた。
「これ以上、見てられない。」
そこにはレーザーガンを構えているリンの姿があった。
しかし先程とは違い、左手には剣が握られている。
リンは右手に握られているレーザーガンを捨て、懐から近未来的な色々機械が詰まっていそうな短い棒を取り出した。
リンが親指の部分に備え付けられているボタンを押すと、その棒は変形して剣の形になる。
「ほう・・・レーザーガンは使わないのか・・・」
健一は面白そうにリンを見ている。
「シン大将直伝の剣術と、燃直伝の気功術を見せてあげる。」
リンはそう言って辺りにある気を収束し、戦闘体制を取る。
「ほう・・・気功術も使えるのか・・・」
そう言って健一も右手を構えた。
リンが黄色に輝きだした瞬間、健一は剣に変えてある右手を突きの形にしてリンに向かって地を蹴って突っ込んだ。
それを難なく避けたリンは剣を横凪に振るい、もう一つの剣を背中を守るようにして後ろに構える。
横凪に振るった攻撃は健一の右手によって防がれ、背中に構えてある剣には洋子の剣が当たった。
「はああああっ!」
そう叫んだリンは地を蹴って健一の目線の高さに膝が来るまで上に飛び、回転しながら右足は前に蹴り、左足は後ろに向かって蹴った。
右足は健一の顔面に当たり、左足は洋子のわき腹に当たった。
健一と洋子はそれぞれ違う方向に飛び、お互い受身をとって体制を立て直す。
「なかなかやるじゃないか。」
感心したように健一が言う。
健一と洋子は再びリンに向かって突っ込んで行った。
健一は途中で反転しながら遠心力をつけて横凪に振るい、洋子は空中で前転しながら遠心力をつけて縦に剣を振り下ろした。
片方は自分の前で剣を立てて、片方は自分の上に剣を横で掲げて攻撃を防いだリンは洋子を蹴りで吹き飛ばしてから自分の足で健一の足をはらい、バランスを崩してから健一の腹に剣を突き刺した。
「はあ・・・はあ・・・これで・・・」
息切れしているリンは勝ちを確信して顔の筋肉が緩んだ。
その瞬間、健一の胸の辺りから剣の刀身が飛び出し、りんの腹を貫通する。
「かはっ!!」
リンは心臓目掛けて飛び出してくる瞬間、思い切り体をひねり、被害を最小限にとどめたのだ。
「油断したな・・・リン。」
健一は自分の腹に刺さっている剣を抜いた。
膝をついたリンは腹を抑えながら健一を睨む。
「なかなか楽しませてもらったぜ。」
抜いた剣を健一はリンの喉元に突きつける。
健一はそのまま剣を上に掲げ、剣を振り下ろした。
しかしその剣はリンまで届かず、途中で止まった。
「まあまあ、そんなに焦るなよ。まずは俺と戦ってからってのはどうだい?金田。」
そこには健一の剣を人差し指と中指で白刃取りをして抑えている黒田良平の姿があった。
「そうそう、もちろん私もね。」
リンの後ろには大きな大剣を背負っている可愛らしい少女がいる。
「ほう・・・」
健一は二人をまじまじと見た。
「く・・・黒田君・・・どうして・・・?」
驚いた顔をしているリンが信じられないといった風に聞いた。
「俺たちは国の特殊部隊でな、もともとは倉田・・・いや、荒木燃を見張るために派遣されたんだが、居ても立ってもいられなくてな・・・」
良平はリンを見てにやりと笑った。
「私も同じ!!」
後ろの少女が手を挙げながら言った。
「この娘は?」
先程から気になっていたことをリンは健一に向かって問い掛けた。
「ああ、そいつは俺の妹だ。名前は黒田美穂、歳は15歳、馬鹿、以上。」
良平がそう言った瞬間、美穂は大剣をすばやく抜き、峰の部分で良平のはらを殴る。
「ごふっ!!」
良平は変な声をあげ、その場でうずくまった。
「では改めまして、黒田美穂。15歳の美少女です。得意な武器は大剣。助太刀に参りました。」
少々引っかかる部分もあったが、リンは気にしないことにした。
「う・・・うん、ありがとう・・・」
リンは一応返事を返す。
「もうそろそろいいか?」
もうくたびれたのか、しゃがみ込んでいる健一が話し掛けてきた。
「ああ、いつでも来な。」
良平は健一を挑発するように言った。




