第29話 サイボーグ
放たれた弾は燃の頭に当たる寸前で止まった。
「!?」
美樹は驚いた顔をした。
燃の周りは黄色いオーラで包まれていた。
「はあ!!」
燃は気合の声とともに気を膨張させて美樹を吹き飛ばす。
「くっ!」
美樹は天井にぶつかり、落ちるときに畳に激突する直前で手をついて受身を取り、態勢を立て直した。
美樹が立ち上がると燃はもう既に美樹の懐に飛び込んできていた。
燃は美樹のみぞおちの辺りに掌底を叩き込み、窓に向かって吹き飛ばした。
美樹は窓を突き破り、外に放り出された。
ここは二階なので落ちたら死にはしないが、相当な痛手を受けるだろう。
燃も窓から飛び出し、攻撃態勢のまま美樹の真上に来た。
「・・・・・・ッ!」
何をするか感づいた美樹は空中で防御の態勢をとった。
燃は右手に気を蓄え、掌底を美樹に向かって放つ。
直接のダメージは防御によって防がれたが、その衝撃をとどめる手段が無い美樹はそのままに勢いで地面に叩きつけられた。
美樹の落ちたところから半径3メートル程のクレーターが出来た。
「くっ・・・」
美樹は悔しそうに起き上がった。
「すごいな・・・これ食らって何ともないとは・・・」
燃は美樹が叩きつけられてから少しだけ遅れて降りてきた。
燃の周りは黄色に輝き、真っ暗になった辺りを照らしている。
美樹は燃のいる方向に向き直り、手を前にかざした。
「これなら・・・どうだ!!」
美樹がそう言うと手が機械のように変形していった。
「サイボーグ!?」
燃は信じられないと言ったように叫んだ。。
美樹の両腕はガトリングガンの形に変わり、燃に銃口が向けられた。
「くっ!!」
燃は急いで気を収束し、自分の周りにバリアを張り巡らした。
美樹のガトリングガンが火を噴き、すごい勢いで燃の気で出来たバリアに激突していく。
「っ・・・やばい・・・」
燃は壊れそうな自分の気を見て、焦りだした。
燃はバリアを解き、思い切り体を回転させて回避しようとした。
「避けてよかったの?」
美樹は笑いながらそう言った。
「何!?」
燃が咄嗟に後ろを見るとそこには洋子が立っていた。
撃たれた弾のなかの一つが洋子の腹部に当たり、洋子は血を流しながら倒れた。
「くそっ!!」
燃は急いで駆けつけようとした。
「敵に後ろ見せちゃっていいのかな?」
燃は後ろからそんな声が聞こえて急いで振り返った。
そこには何やら強大なエネルギーを充填したレーザーガンのようなものを手から生やした美樹の姿があった。
「しまった!!」
燃は回避しようとしたが、もう既に銃口から黄色い光がほとばしり、光線が燃の肩を貫いた。
「ぐっ!!」
燃は肩を抑えながら受身を取った。
「燃!こっちは任しておけ!」
後ろから健一のそんな声が聞こえ燃は少し安心した。
「なあに?向こうが助かれば自分はどうなっても良いって訳?」
美樹は肩を抑え、肩膝をついている燃を見下ろしながら言った。
「いや、それは違うな・・・」
燃はそう言って立ち上がった。
「一番良い結末は俺も助かることだ。」
燃が目を開くと瞳が赤く染まっていた。




