第28話 仕事
「それじゃあ、お話しようか。」
美樹は伸びをしながら言った。
「はあ・・・まず何が聞きたい?」
燃はため息をついてから言った。
「訊きたい事は一つだけ。君の本名教えてくれるかな?」
「教えたらどうするつもりだ?」
燃は真剣な顔で言った。
「もし・・・君の本名が荒木燃だったら私は君と戦わなくちゃいけない。」
美樹も真剣な顔で言った。
「何故?」
燃は怪訝な顔をしながら言った。
「訊いてるのは私だよ?私の問いに答えてくれないかな?」
「・・・・・・」
燃は黙り込んだ。
「どうなの?」
美樹は燃の顔を覗き込んだ。
燃は自分の顔の前に手を掲げた。
「ああ、そうだよ。俺が荒木燃だ。」
燃がそう言うと倉田信吾の顔から荒木燃の顔に変わった。
「・・・・・・しょうがないか・・・」
美樹はそう言うと懐からナイフを取り出した。
「本気で戦うのか?この戦いは避けられないのか?」
燃はナイフをしっかり握っている美樹に向かってそう言った。
「うん・・・これも仕事だからね。・・・・・・じゃあ、行くよ!!」
美樹はそう言って燃に向かってナイフを投げつけてきた。
「おっと。」
燃はそれを難なく避け、美樹の方を向いた。
しかしそこに美樹はいなく、既に燃の懐へ飛び込んでいた。
「くっ!!」
燃は美樹の拳を思い切り腰をひねって避け、間合いをとるために後ろへ飛びずさった。
「ま・・・まて、部屋で戦うのはよそう!」
燃は美樹の攻撃をかわしながら言った。
「皆深い眠りについてるから大丈夫だよ。」
美樹は攻撃を止めずに言った。
「どういう意味だ?」
燃は美樹のパンチを左手で払いのけながら言った。
「私たち以外の各部屋に睡眠薬をばら撒いておいたの。これから3時間ぐらいは起きないから大丈夫。」
美樹は燃に向かって回し蹴りを繰り出しながら言った。
燃はそれを左手で受け、前に踏み込み、肘打ちを繰り出した。
完全なカウンターだったはずだが、美樹は人間ではありえないような角度で腰をひねり、それを避けた。
「なっ!?」
燃は驚き、カウンターを食らわないように間合いを取るためバックステップをした。
「逃がさないよ。」
美樹はそう言って地を離れた燃の足を刈った。
「おわっ!」
燃は空中にいたのでたまらず転んだ。
すぐに起き上がろうとしたのだが、美樹に胸の辺りを踏みつけられた。
「意外と大したこと無いのね。」
美樹はそう言って懐から拳銃を取り出した。
「さようなら。」
美樹は拳銃の引き金を躊躇いもせずに引いた。