第24話 バスの中
「学校の方はどうしたんだ?」
倉田信吾の姿の燃が真剣な顔で言った。
「一応、軍隊の特殊部隊のほうに連絡入れといたから何とかなった。」
健一は後ろから話し掛けてきた信吾の方に振り返りながら言った。
「でも、強いやつが来たらどうするの?」
健一の隣に座っている洋子が口をはさんだ。
「まあ、特殊部隊もそんなに柔じゃないだろ。」
健一は考え事をしている格好でそう言った。
「なあ〜につまんなそうな顔してんだよ?」
前の座席からお調子者の黒田良平が覗き込んでいた。
「せっかくの修学旅行なんだから楽しそうにしろよ。」
良平はにやりと笑いながら言った。
燃達は今、修学旅行で京都に行くためのバスの中にいる。
学校のことを考え休もうとしたのだが、クラスの皆がそれを許さず、無理やり連れて行かれたのだ。
「そうだな。無理やり連れてこられた修学旅行でも楽しむか・・・」
健一は皮肉をこめて返答した。
燃、健一はずっとこのままのテンションである。
学校のことが心配でそれ所ではないのだ。
洋子はそれなりに楽しみ、秋葉原竜太の姿をしたリンはハイテンションで修学旅行を満喫している。
「なあ、信吾。」
健一は燃の偽名を呼んだ。
「何だ?」
燃はなるべく暗く答えた。
「前から気になってたんだけどよ・・・なんであいつって男装してんだ?」
健一はリンの男装姿を見ながら言った。
「その方が萌えるから。」
燃は真顔で言った。
「は??」
健一は酷く驚いたようだ。
「冗談だ。本気にするな。」
燃はにやりと笑いながら言った。
「・・・・・・で?本当の理由は何だ?」
健一は呆れた目で見ながら言った。
「俺の正体を隠すためにあいつには出来るだけ目立ってもらいたかったんだ。」
燃はバスの後ろの方で騒いでいるリンを見ながら言った。
「それで女で目立つ方法がわからないって言い出してな・・・だったらいっそのこと男になってみたらどうだ、って言ったらリンも納得したんだよ。」
燃は笑いながら言った。
「なるほど・・・で、修学旅行の風呂はどうするんだ?」
健一は心配していたことを口に出した。
「・・・・・・」
燃は真剣な顔で黙っている。
「・・・・・・」
健一は燃の顔を見つめている。
「・・・・・・どうしよっか・・・」
燃は次に口に出した言葉はその言葉だった。
「・・・・・・まじかよ・・・」
健一はがっくりとうなだれた。