第23話 イメージ
「剣の構成をもうちょっと早くしたほうがいいんじゃないのかな?」
リンは健一の剣の構成を見ながら言った。
「そうか?」
健一は剣の形になっている自分の右手を見た。
「うん、この速さだと構成している間に攻撃を叩き込まれちゃうよ。」
リンは軽く健一の腹を殴って見せる。
「速さかあ・・・」
健一は1度手の形に戻し、再び剣の形に変えた。
「速さなんて気にしたことなかったなあ・・・」
健一は困ったように言った。
「速くする特訓とかはしたことないの?」
リンは健一に聞いた。
「ああ・・・今までの敵はそんなことしなくても勝ててたからな・・・」
健一は首をひねりながら言った。
「燃に聞いてみたら?」
リンは燃の居る方を指で指しながら言った。
「燃に?」
健一は不審そうに言った。
「あ・・・えと・・・燃って色々物知りだからさあ、そういうのも知ってるんじゃないかな・・・?あはは・・・」
リンは慌てながら言った。
「ふ〜ん・・・まあ、いいけど・・・」
健一は疑った目でリンを見ながらそう言うと、言われたとおり燃の所へ向かった。
「お〜い、燃。」
健一は洋子に気功のコツを教えている燃を呼んだ。
「何だ?」
燃は洋子との話を一旦止め、健一のいる方に振り返った。
洋子は燃に言われたことを復習しているのか、地面に枝で文字を書いていた。
「俺の体の変形についてちょっと教わりたいんだけどよ・・・変形スピードを早くしたいんだが、どうすれば良い?」
健一は自分の手を剣に変形して見せていった。
変形させる時間は約2秒。
「で?何で俺に聞く?」
燃は不思議そうに聞いた。
「いや、リンが教えてもらえって・・・」
健一は戸惑ったように言った。
燃がリンの方を見ると、リンは謝るようにして両手を合わし、頭を下げていた。
燃はそれを見て呆れたような顔をした。
「ま・・・まあ、知らないんならいいや。自分で何とかする。」
健一はそのやり取りを見て気まずくなったのかそう言って引き下がろうとした。
「・・・イメージだ。」
燃はポツリとそんなことを言った。
「え・・・?」
健一は燃を見た。
燃は真剣な顔で健一を見ている。
「イメージ。変形する前に自分の体の変形した姿を想像するんだ。そうすれば早くなると思う。」
「イメージか・・・」
健一は思いもよらなかったのか自分の手を見ながら言った。
「よし、じゃあやってみろ。」
燃は健一の腕を指で指しながら言った。
「お・・・おう。」
健一はそう言って目をつぶり、自分の腕が剣になるイメージをした。
「はっ!!」
健一が気合を入れるとあっという間に健一の手は剣に変わった。
その時間は1秒もかからなかった。
「おお!!」
出来た本人が一番驚いていた。
「出来たじゃないか。」
燃は驚いている健一を見ながら言った。
「す・・・すげえ!何でこんなこと知ってるんだ?」
健一は燃に向かって聞いた。
「あ・・・それは・・・な・・・何となくだよ、何となく!こうやったら出来るんじゃないかなあってさ。」
燃は焦ったように言った。
「そうか・・・なんとなくか!やっぱりお前はすげえな!」
健一はよほど嬉しいのか焦っている燃に全く気づいていなかった。