第20話 提案
「なあ、燃。あんな大きいのあいつ一人で大丈夫なのか?」
健一は燃の横に下りて洋子を地面に下ろすとそう言った。
「ふっ。うちの助手をあまり甘く見ないほうがいいぞ。」
燃は健一を見てにやりと笑った。
「いや、甘くいているわけではないんだが、さすがにあれは辛いんじゃないのか・・・?」
健一は大きなムカデを見ながら言った。
「お前・・・まさかリンの実力がお前と戦った時の実力そのままだと思っているのか?」
燃は健一の顔を驚いた顔で見ながら言った。
「なっ!?あれ本気じゃなかったのか?」
健一はショックを受けたように言った。
「いや、体術では本気だったみたいだが、あいつは武器を持ってはじめて自分の実力を発揮するんだ。」
「武器?」
「ああ、主に拳銃だな。熊の妖の手を撃って洋子を助けたのもリンだ。体術は接近戦になったときのために鍛えておいたみたいだけどな。」
「なるほど・・・」
健一は顎に手を置き、複雑な表情をしていた。
「あ・・・あのさ、燃。」
今まで黙っていた洋子が口を開いた。
「何だ?」
燃は洋子のほうに顔を向けた。
「さっきはごめん。なんか私パニックになってたみたいで・・・」
洋子は申し訳無さそうに言った。
「ああ、別にいいよ。見てて面白かったし。」
「なっ・・・」
洋子の顔はみるみるうちに赤くなった。
「いや〜、人が焦ってるところって結構面白いぞ。」
燃は冷やかしの目で洋子を見ながら言った。
洋子はすっかり黙ってしまった。
「おい、燃。あっちは見なくていいのか?」
健一は洋子の様子を見ながら言った。
「ああ、見るまでも無いだろ。」
燃はそっけなく言った。
燃がそう言った頃にはリンはレーザーガンでムカデの頭を貫き、ムカデを殺していた。
「終ったよ、燃。」
リンは笑顔で燃に歩み寄りながら言った。
「ご苦労様。」
燃はリンに向かって言った。
「すげ・・・」
健一は思わず声を漏らした。
「なあ二人とも、ちょっと提案があるんだけどさあ。」
燃は驚いている健一と、黙っている洋子をを見ながら言った。
二人とも燃をみた。
「修行してみないか?」
「はあ?修行?」
「え!?私も!?」
健一は訳がわからないと言った風に、洋子は驚いた風にそれぞれ言葉を発した。
「ああ、健一はリンと、洋子は俺と、でどうだ?」
燃は二人を交互に見ながら言った。
「ちょっと待て。それだったら俺はお前と修行がしたいんだが・・・」
健一は異議を唱えた。
「いや、リンも体術鍛えた方がいいからお前と修行すればお互い力が伸びていいだろ。」
燃は健一に向かってそう言い、洋子のほうに顔を向けた。
「お前には治癒術を学んでもらいたい。」
「治癒術?治すってこと?」
洋子は首をかしげながら聞いた。
「ああ、気功術を学んで傷を治せるようになってもらいたいんだ。」
燃は頷きながら言った。
「で・・・でも私普通の人間だよ?」
洋子は戸惑ったように言った。
「リンだって元は普通の人間だ。」
燃がそう言った瞬間、後ろでカチャリと言う音がした。
「『元は』ってどういう意味かな?燃?」
リンは燃にレーザーガンを押し当てながら言った。
「い・・・いや、特に意味はない・・・です・・・はい。」
燃は汗をかきながら言った。
「と、言うことで普通に人間にも気功なら扱える。」
燃は気を取り直したように言った。
「う〜ん・・・まあ、私は別にいいけど、できるかな・・・?」
「大丈夫、大丈夫。何とかなるさ。」
燃は笑いながらそう言った。
「じゃあ、二人ともOKな?」
「うん。」
「ああ。」
燃は半ば強引に二人を納得させた。
「よし、それじゃあ。」
燃はそう言ってその場を去ろうとした。
「ちょっと待て。昨日は逃がしたが今度はそうは行かねえ。」
健一はにやりと笑いながら言った。
「・・・・・・何だよ?」
燃は健一の方に振り返った。
「お前の過去のことだよ!結局昨日、あのまんまじゃんか!」
「ちっ・・・ばれたか・・・」
燃は舌打ちをしてそう言った。
「分かったよ・・・話せばいいんだろ。」
燃はその場に座り込んでいった。