第18話 気功
「燃!!」
リンはそう言って燃の前に立ちはだかり、首を振った。
燃はリンの近くに行き、耳元で何か囁いた。
リンは納得した顔をして燃の前からどき、洋子の隣に戻ってきた。
「どうしたの?」
洋子はリンの不審な行動に疑問を抱き、リンに尋ねた。
「何でもない。」
リンはそう言って燃と健一の方を向いた。
「さあ、かかって来いよ。」
燃は無防備な構えのまま健一に向かって言った。
「・・・・・・何を企んでいる?」
健一は燃を疑った目で見ながら言った。
「何も企んじゃ、いないさ。」
燃は笑いながら言った。
「さあ、来いよ。」
燃はもう一度言った。
「・・・わかった!」
健一はそう言って剣にしてある右手を突き出し、地を蹴って燃に向かって突きを繰り出した。
しかしその剣は燃までで届かず、燃に刺さる数センチ手前で止まった。
「なっ!?」
健一は驚きの声をあげた。
「はあ!!」
燃が気合の声を入れると健一は5メートルほど吹き飛んだ。
「くっ!」
健一は何とか受身を取り、地に着地をした。
「なに・・・あれ・・・」
洋子は燃を見て驚いたように言った。
燃の周りには黄色いオーラが纏わりつき、黄色い空気が渦巻いていた。
「気功・・・か・・・」
健一は燃を見ながら言った。
「気功って・・・あのインチキくさい気功・・・?」
洋子は尋ねた。
「ああ・・・だが、あんなに強大な気功は見たことが無い・・・やはり、只者じゃなかったな・・・」
健一は嬉しそうに言った。
おそらく強い相手と戦うことが楽しいのだろう。
「行くぜ!!」
健一はそう言って地面を蹴ろうとした瞬間、燃は健一の視界から消えた。
「何!?」
健一は驚きの声をあげ、急いで辺りを見回すと自分の足元に姿勢を思い切り低くした燃がいた。
「よお。」
燃はそう言って体を反転させながら健一の顎を蹴飛ばした。
「がはっ!!」
健一は3メートルほど上空に舞った。
しかし、さらに上には黄色に輝いている燃の姿があった。
「はあ!!」
燃は掛け声とともに掌底を健一の腹部に当てた。
「ぐっ!」
健一は衝撃を抑える術がないので衝撃をまともに受けてしまい、すごい勢いで地面に落下していった。
健一が地面にぶつかり、地面に大きなクレーターができ、土煙が舞った。
燃はそのクレーターのそばに降り立ち、動かなくなった健一を見下ろした。
「げほっげほっ!」
洋子が咳き込みながら燃の近くに来た。
「ちょっと燃!やりすぎだってば!」
洋子は怒ったように言ってクレーターの下に降りた。
健一の体は半分土に埋もれ、体は傷だらけになっていた。
「大丈夫、健一君?」
洋子は健一の顔を覗き込んだ。
健一は返事をすることも出来ずにただ気を失い、倒れていた。
洋子の隣に燃とリンが降りてきた。
「洋子、ちょっとどいてくれ。」
燃は洋子に向かって言った。
「まだ戦うの!?もう健一君は気を失ってるんだよ!?もういい加減にして!!こんなの私の知ってる燃じゃないよ!私の知ってる燃はもっと優しくて・・・もっと・・・」
洋子は涙目になりながら言った。
「・・・・・・リン。」
燃はリンを見ながらそう呟いた。
リンは頷いて洋子の手を掴んでクレーターから出た。
「あっ!ちょっと、燃!やめて!これ以上戦わないで!!」
リンは騒ぐ洋子の手を引っ張り、遠くへ行った。
燃はそれを見送って健一を見下ろした。