第14話 倉田信吾の正体
夜の学校は真っ暗でいかにも幽霊が出そうな雰囲気である。
そんな中を倉田信吾は歩いていた。
しばらく歩くと、横からいきなり人影が出てきた。
慌てて構えを取ったが、既に遅く、両手を抑えられてしまった。
「だ・・・誰ですか?」
信吾は戸惑ったように言った。
「誰はねえだろう?クラスメイトの名前も忘れたか?」
健一は信吾の手を押さえつけながら言った。
後ろには洋子も居た。
「か・・・金田君・・・と渡辺さん・・・?」
信吾はほっとしたように言った。
「さっきの不良たち、実は俺が頼んでお前を襲ってもらったんだ。」
健一は笑いながら言った。
「な・・・なんでそんな事・・・?」
信吾は怯えたように言った。
「お前の正体を確かめるためだよ。俺は秘密にされるのが嫌いなんでな。」
健一は信吾を睨みつけた。
「まあ、もう大体分かってるけどな・・・いいかげん正体現せよ、荒木燃。」
健一はにやりと笑った。
「な・・・何を・・・?」
信吾は慌てたように言った。
「お前、こいつを守る時、体張って守ったろ。あってほとんど間もないやつを体張って守るやつはそうそう居ない。」
健一は洋子を指で指しながら言った。
「現にお前はさっき、あの女を確実な体を張るほうではなく、不確実なその女自体を避けさせる行動に出た。つまりあいつとお前は知り合いだということだ。」
健一は顔をあげた。
「お前が荒木燃なんだろ?」
健一はしっかりと信吾の目を見て言った。
「・・・・・・」
信吾は何も言わない。
「もう無理だろ?燃。」
後ろから声がし、振り向いてみるとそこには秋葉原竜太が居た。
「そうだな。」
信吾から高い声が発せられた。
それは洋子にとって聞き覚えのある声だった。
「燃・・・?」
洋子はその名前を口に出してみた。
「ああ、俺が荒木燃だ。」
信吾はそう言って手を顔の前にかざした。
信吾の顔は見る見るうちに変わり、そこには洋子の幼馴染の顔があった。
「燃!!」
洋子はそう言って燃の飛びついた。
燃は洋子をしっかりと抱きとめ、竜太を見た。
「リン、お前ももういいだろう。」
燃はそう言って竜太の前に手をかざした。
すると竜太の顔は見る見るうちに変わり、女の顔になった。
「全く・・・燃ったら、普通の人が傷つくことに関しては弱いのね。結局あれが原因でばれちゃったじゃん。」
先ほどの声とは比べ物にならないほど高い声を出した。
リンはかつらを取り、まとめていた髪を解いた。
髪は腰まで伸び、顔は童顔でかなり可愛い感じだった。
「なっ!?」
健一はさすがに驚いたようで口をあんぐりと開けていた。
それを見て燃とリンは顔を見合わせ笑った。
「よし、洋子。ちょっと離れてくれ。これから真剣な話になりそうだから。」
燃はそう言って洋子の腕を解いた。
洋子も大人しく離れた。
「で?俺に何の用だ?」
燃は健一を見ながら言った。
「1年前の事件のことについて聞きたい。」
健一は燃の目を見ながら言った。
「あ〜・・・1年前のことは話さないことにしてるんだ。自分のためにも・・・」
燃は頭を掻きながら言った。
「・・・正直に言おう。今、あんたに1年前の事件の疑いが掛けられている。それを証明するためにも話して欲しいんだ。」
健一は外をみながら言った。
「やっぱりな・・・俺に話があるんじゃなくて俺を捕まえに来たんだろ。そんで、ついでに洋子の見張りか・・・」
燃は洋子を見ながら言った。
「えっ!?私を見張ってたの?健一君。」
洋子は驚いたように言った。
「ああ・・・すまない。」
健一は申し訳無さそうに言った。
「俺はあんたがあんなことするとは思えない!証拠も無いのに捕まえるのはおかしいと思う。だから話してくれ。」
健一は頭を下げた。
燃とリンは顔を見合わせ、お互いに頷いた。
「じゃあ、こうしよう。俺たちがお前の力を見る。それである程度以上強ければ話す。それでどうだ?」
燃はにやりと笑いながら言った。
「分かった。」
健一は顔をあげて言った。