表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: 水野 すいま
123/124

第123話 限界

燃は学校の上空、空間の裂け目のあるところまで飛び上がると、そこで停滞した。

裂け目からは今のも出てこようとしている妖の姿がある。

様子を窺っているのか燃をじっと見ている。

裂け目全体を覆っている結界はもう崩れかけており、所々歪んでいた。

「ちょっと急がないといけないみたいだな・・・」

誰に言うわけでもなく一人で呟くと、燃はゆっくりと両手を広げた。

目を瞑り、意識を集中させる。

今までに扱ったことすらない莫大なエネルギーを使うのだ。

この先どれほどの苦痛が待ち受けているのか分かったもんじゃない。

しかしこれが燃にとっての使命。

ここでくじけて止めてしまえば世界が滅ぶ。

絶対に止めることは出来ない。

そんなことを考えながら、燃がゆっくりと目を開ける。

すると急速に辺りの気が燃に収束れはじめた。

左手に黄色いオーラが纏われ、それが急激に増幅されていく。

下にある植物が燃を中心にして円形に枯れていっている。

この結果以内の全ての気を奪うつもりなのだろう。

「ぐっ・・・!!」

燃の腕、足、背中に亀裂が走り服に血がにじんでいく。

「・・・・・・ッ!!げほっ、ごほっ、ごほっ!!」

大量の血を吐き出し、燃は開いている右手で口を抑えた。

「内臓も痛んできているみたいだな・・・・・・ぐっ!!ごほっ!!」

いつもより吐き出した量が多いのを見てか、燃はそう呟くものの、吐血は止まらない。

しかし気の収束は止めずに今もなお収束し続けている。

しばらくすると額から左頬にかけて大きな亀裂が走った。

「うっ・・・・・・ああああああああああ!!」

あまりの痛さに燃が右手で目を抑えながら叫び声を上げる。

収束を続けるためにその手をどかすと、裂け目は燃の目を完全に縦断していた。

これではもう左目は見えないだろう。

頭皮も裂けたのだろうか、頭から血がつたい、燃の顔の左半分を赤く染めた。

「はあ・・・はあ・・・はあ・・・収束・・・・・・完了・・・・・・」

そう言った燃の左手には半径10メートルはあろう、巨大な黄色いオーラの塊が浮いていた。

「・・・・・・!!」

燃が気合を入れるとその塊は急速に縮んでいき、燃の手のひらサイズに収まった。

次に右手に意識を集中させ、今の活動のエネルギー以外全てを右手に送り込む。

こちらは自分のエネルギーであるためか、あっという間に膨張し、先程のものと同じくらいの大きさのものが燃の右手に浮いていた。

それを圧縮し、同じように手のひらサイズに収める。

「ふう・・・・・・」

燃はゆっくりと右目だけをあけ、それらを見た。

右手には赤い、左手には黄色い宝石のようなものが浮いている。

燃はそれらを握りつぶし、両手首から先にだけ纏わせる。

不意にポケットに手を入れ、燃は小さな手帳のようなものを取り出した。

『小泉あんな作 エネルギーの使い手の掟 の破り方』と記してある。

「師匠。俺、これで使命をまっとう出来ますよね」

そう呟いて背表紙を開くと

『ガンバ!!』

とだけ記してあった。

それは汚い字だったけれど、燃にとっては忘れられない字。

「ったく・・・あの人は・・・・・・」

燃は小さく笑うと、顔を上げ、それを遠くに思い切り投げた。

「エネルギーの使い手本来の力、使わせていただきます!!」

誰に対してでもなく、燃はそう言って輝く両手を広げた。

その瞬間結界が破れ、妖たちが一斉に飛び込んでくる。

「残念、時間切れだ」

燃はその妖たちを見ながらゆっくりと両手を合わした。

その瞬間、真っ白な光が輝き、結界に囲われているもの全てを飲み込んだ。

そして3秒ほどそれが続くと、やがて光は失われ、元の明るさに戻った。

しかし、さっきまであった町はどこにも無く、その場所は大きなクレーターと化している。

結界もいつの間にか無くなり、そこには先程のような裂け目のある空ではなく青く澄んだ綺麗な空が広がっていた

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ