第12話 倉田信吾への疑惑
「ふう・・・これで戦況はマシになったな・・・」
健一はそう言いながら後ろに2メートルほど飛び下がり、死神から間を取った。
そして再び地を蹴り、死神へ突進していった。
健一は剣に変えた右手を横凪に振るった。
死神はそれを鎌の柄で受け止め、そのまま鎌を振り下ろした。
「おわっ!」
健一はそう言って急いでサイドステップをして鎌を避けた。
だが、死神の鎌は予想外に早く、健一の肩をかすめた。
「くっ!」
健一は左手を恐竜のような手にし、構えた。
健一の肩からは血が流れ出ている。
死神は天井を切り裂きながら、鎌を振り下ろした。
健一はそれを左手で掴んだ。
「終わりだ!」
健一はそう言って剣にしてある右手で死神の肩から腰まで切り裂いた。
死神は断末魔を上げ、倒れた。
「あっ!健一君、大丈夫!?」
健一が校舎の外へ出ると洋子が走り寄ってきた。
「ああ、このくらいの傷なら何とも無いだろう。」
健一は自分の肩を見ながら言った。
「で、あいつは?」
健一は辺りを見回したが、信吾の姿はどこにも無かった。
「倉田君は病院行って来るって言って帰っちゃったよ?」
「そうか・・・」
健一はそう言って校舎のほうへ歩いていった。
「待ってよ〜〜」
洋子はその後に続いた。
二人は校舎に戻り、健一は校舎の修理、洋子は死神の死体を眺めた。
「だけど今回は随分と強い敵だったね。」
洋子は死体が消えていくのを眺めながら言った。
「そうだな・・・妖は人の形に近い奴ほど厄介だって言うからな。・・・まあ、人の形をしていなくても強いやつは居るけどな。」
健一は校舎の修理をしながら言った。
「ふ〜ん・・・そうなんだ。・・・ということは、人の形をしている妖も居るってこと?」
洋子は思いついたように言った。
「そういう可能性もあるってことだ。まだ目撃例は無い。」
健一は修理が終ったのか、立ち上がりながら言った。
「そういう妖ってどうやって見分けるの?」
「知らん、見たことが無いからな。」
健一は再び歩き出しながら言った。
「そんなことより、あの倉田ってやつ・・・最初から妖のこと知っていたみたいだな・・・」
健一は思い出すように言った。
「確かに・・・あんまり驚いてなかったもんね・・・手に鎌が刺さっても痛がってなかったし・・・只者じゃないね・・・健一君もだけど。」
「その只者じゃない俺に蹴りを食らわすお前も只者じゃないな。」
健一は部屋に入ったことを思い出しながら言った。
「あ・・・あれは、健一君が変なことを言うからでしょ。」
洋子は怒ったように言った。
「洋子の洋って実は妖って書くんじゃないのか?」
健一は笑いながら言った。
「そんなわけ無いでしょ!」
洋子は健一のすねを思いっきり蹴飛ばしながら言った。
「っ〜〜やはり俺の目に狂いは無かったか・・・」
健一はすねを抑えながら言った。
「まだ言うか!」
洋子は再び健一のすねを蹴飛ばした。
「っ〜〜」
健一は涙を浮かべながらうずくまった。
しばらくして健一は起き上がった。
「まあ、そんなことよりも、倉田が何者なのか確かめなきゃな・・・」
健一は無気味な笑いを浮かべながら言った。
洋子は再び背筋に寒気を感じた。




