第119話 謝罪
「ふう・・・・・・大体この辺か」
燃は地面に降り立つと辺りを見回す。
辺りにはまだ人がいない。
皆相当離れたのだろうか。
「あの・・・・・・燃、そろそろ降ろして・・・・・」
相当恥ずかしかったのだろう。
リンが顔を真っ赤にしながら言った。
「あ、そっか。忘れてた」
そう言って燃がリンを肩から地面に下ろす。
「おい、燃」
良平の声に燃が振り向く。
丁度洋子を降ろしている途中だ。
その奥で光太郎も美穂を下ろしている。
そして健一も少し遅れて到着した。
「なんだ?」
「なんだ?じゃねえよ。ここってまだ町の中だろ、いいのか?」
「ああ、正確にはあの学校から半径2キロメートル以内にいなければ良いんだ。」
良平の問いかけに燃は遠くに見える学校を指で指しながら説明した。
「で?どうするの?何か考えがあるんでしょ?」
リンは燃に抱きかかえられていたためか、乱れた服装を直しながら言った。
「まあな。だけどその前に合わせたい人たちがいる」
「?」
燃がそう言って右の方を見るとリンも疑問の表情を浮かべつつ、右を見た。
そこにはSBクラスの担任とクラスメート達。
皆心配そうにこちらを見ている。
担任は燃たちの近くまで行くと、燃、良平、美穂、リン、健一の順に頭を本気で殴っていった。
「痛っ」
「でっ」
「った」
「いっ」
「うっ」
それぞれ痛みにうめき声を上げる。
「ったく、悪ふざけしすぎだ。こんなに町を滅茶苦茶にしやがって。」
「へ?」
『悪ふざけ』という言葉が意外だったのか良平が素っ頓狂な声を上げる。
「『へ?』じゃねえ!!」
「ふげっ!!」
再び良平が殴られると良平から奇妙な声が発せられた。
「そういう時はごめんなさいだろうが!!散々迷惑かけたんだから謝るのが当然だ!!」
そう言って担任はクラス全員の前にその5人を立たせた。
「さあ、早く」
担任が急かす。
「え・・・・・・あのちょっと」
「早くしろ!!あやまりゃあ良いって言ってんだよ!!」
リンが戸惑うと担任が怒鳴りつけた。
「えっと・・・・・・じゃあ」
リンが皆と目配せし、声を揃える。
「「「「「すみませんでした!!」」」」」
5人が頭を下げ、その言葉を発した瞬間、クラス全員がその5人に飛び掛りもみくちゃにした。
「ねえ、君が竜太だったんだよね。だったらさ、これからも仲良くやっていかね?」
「黒田、やっぱりお前がいなきゃこのクラスはまとまんねえ!!」
「美穂ちゃん、愛してるぞ!!」
「金田、お前すごいな。迫真の演技だったぞ!!」
「荒木、お前犯罪者なんだってな!!今度サインくれ!!」
友情を分かち合うもの、告白するもの、なんぱするものと様々であるが誰もが皆、この5人を受け入れてた。
その枠組みから燃が一人こっそりと抜け出す。
そしてそれを楽しむかのような目で見つめるとそのままゆっくりと後ずさっていった。