第118話 脱出
白い粉の山の中から燃、そして健一が出てきた。
「健一君、燃!!」
二人とも無事なのを見て安心したのか、洋子が明るい声を上げる。
それに反応して皆が頭を上げる。
燃は手を振り、健一は何か難しい顔をしていた。
「ほら、健一。詫び、詫び」
「ん?ああ・・・・・・」
健一は燃に言われて我に返り、皆の方に向き直る。
「皆・・・・・・今更許してくれとは言いませんが、これだけは言わせてください。すみませんでした!!」
そう言って健一は深々と頭を下げた。
すると光太郎が何も言わずに立ち上がり、健一に歩み寄った。
「!」
それに気づき健一が顔を上げる。
「ばあか。謝ったってどうしようもねえんだよ。・・・・・・だから、これからその償いをしていけば良い。じっくりとな」
そう言った光太郎の顔は子を見る親のような顔だった。
「・・・・・・はい!!」
「全く、ちゃんと償えよ?」
「私たちも何か先に償ってもらっちゃおっか。」
健一が返事を返すと、良平と美穂も話に乗ってきた。
「ねえ、どんな手を使ったの?」
それを遠目で見ていたリンが燃に訊く。
「何がだ?」
「健一のこと。普通あんなに決心していたものを覆すなんて事出来ないよ?」
「特に何もしてないさ。・・・・・・ただ、使命を与えただけだ。」
「使命?」
「ま、この話はこの辺にしとこうぜ。あんまり真面目な話ばっかしてると暗くなっちまう。」
そう言って燃は無理やり話を終わりにし、立ち上がった。
「はあ、また秘密ごとなんだね」
呆れたようにリンはため息をつきながら呟いた。
「ああ・・・・・・特に今回はな」
リンにさえ聞こえたかどうか分からない声で燃は空を見ながら呟いた。
「ところでリン、あの結界は後どれくらい持つ?」
空の裂け目を囲んでいる長方形型の結界を示しながら燃が訊く。
裂け目からは妖たちが今にも飛び込んでこようと必死に顔を出している。
「えっと・・・・・・あと15分くらいかな?」
「・・・・・・まずいな」
燃はその一言だけ発すると突然、リンを肩に担いで走り出した。
「ちょ・・・・・・ちょっと燃!?」
慌てるリンを無視して燃は光太郎たちのところまで走っていった。
「光太郎さんは美穂を、良平は洋子を担いでくれ!!」
「あ?どうした、燃?いきなり」
良平が呆けた顔で燃に訊く。
「今から15分以内でこの町を出なきゃならない!!まだ完全には傷が治りきってはいないだろうが手伝ってくれ!!」
「お前には言われたくないな・・・・・・」
血だらけの燃を見ながら良平が苦笑する。
「頼む、ふざけてる時間は無いんだ。二人の足の速さが頼りだ。急いでくれ!!」
「わ・・・・・・分かった」
真剣な表情をした燃を見て良平と光太郎はすぐにそれぞれ、洋子、美穂を担いだ。
燃はそれを確認すると健一の方に向き、目で確認する。
健一もそれに首を縦に振って答えた。
「じゃあ、行くぞ!!」
そう言って燃は地面を蹴って空に飛び上がった。
それに光太郎、良平、健一が続く。