第115話 漆黒
燃が右手の纏っていたエネルギーと左手に纏っていた気を自分の体の前で合わせる。
その瞬間、燃の体を漆黒のオーラが包み込んだ。
「さあ、始めるか」
燃がそう言って地面を蹴ると地盤がめくりあがり、砂煙を舞い上げた。
「・・・ッ!!」
一瞬だけあせりの表情を浮かべた健一だがすぐに状況を把握し、自身の背中に羽を生やして空に跳び上がる。
燃も健一がもともと居た場所まで行くと再び地面を蹴って空に舞い上がる。
「はあ!!」
空に止まっている健一に燃が拳を放つ。
それを受けようと健一が剣に変えた右腕を自分の前に構える。
が、健一の剣はあっさりと折れ、燃の拳を健一の体まで通してしまった。
「がはっ!!」
燃が拳を振り切ると健一は苦痛の声を上げて後ろに吹き飛ぶ。
背中の羽を強く羽ばたかせて何とか止まった健一は再び体制を整え、燃の方を見る。
しかし、すでに燃は健一の前から姿を消していた。
健一は急いであたりを見渡すが燃の姿はどこにも無い。
「こっちだ」
後ろからそんな声が聞こえ、反射的に健一は振り返った。
そこには足を振り上げた燃。
「・・・・・・くそっ!!」
燃は足をそのまま健一の頭目掛けて振り下ろす。
それを健一は獣の手でガードするがここは空中であるため、踏ん張りどころが無く、その蹴られた勢いで地面に落下していった。
健一の体が地面にぶつかった瞬間、大爆発。
健一の落ちたところはそこを中心に大きく地盤がめくれ上がり、健一の姿は確認できない。。
燃は地面に降り立つとそのまま黙ってそこを見下ろしている。
「余所見すんなよ」
後ろからそんな声が聞こえた瞬間、燃の体は吹き飛び、空を舞った。
そしてもともと燃がいた場所から一歩下がったところには獣のような腕を振り上げた健一。
おそらくあの腕で燃の背中を引き裂いたのだろう、吹き飛ばされた燃の背中には大きな傷がある。
「げほっ、ごほっ!!ごほっ!!」
たまらず血を吐く燃。
「どうやらその技は諸刃のつるぎのようだな。自分の体を蝕んで強くなるタイプか?」
健一は燃の手を見ながら訊く。
燃の腕には裂けたような傷がいくつも出来ている。
「げほっ・・・!!・・・・・・いや、力があまり強すぎて体がついていけないんだ」
「そうか・・・・・・ということはまだ本気じゃないってことか。この強さでそんなになるわけ無いもんな」
「ああ。そうだな。正確にはコツを忘れていただけなんだけどな」
そういって燃は自分の目の前で漆黒の剣を作り出して見せる。
「なるほど・・・・・・」
健一は壊れた自分の右腕を修復し、再び剣を作り出して戦闘態勢を整えた。
「だが、もう限界だ。これ以上時間をかけてられない。悪いが一気に片付けさせてもらう」
燃も自分の前にある先程作り出した漆黒の剣を手に取り体勢を整えた。