第111話 友達
遠くで戦っている音が聞こえてくる。
燃が健一と戦っている音だろう。
リンはその音のする方をずっと見つめている。
心配なのだろうか。
「あの・・・・・・」
突然その音のする反対方向から声がし、光太郎、良平、リンの三人が一斉にそちらを向く。
そこには妖の結晶を取り除いたためか、髪が元の黒に戻った洋子の姿があった。
先ほどまで戦っていたためがか、躊躇いがちに話しかけている。
光太郎たちも一瞬身構えたが、様子が違うことに気づいたのか、すぐに警戒を解く。
「もう・・・操られてないんだな?」
上げた腰を下ろしながら良平が洋子の方を見ながら訊いた。
「うん・・・」
「そうか・・・だったらこっち来いよ。」
洋子がうなずくと良平が洋子に手招きしながらそう言った。
「え?」
「だから、もう危険がないならこっち来いよ。そして全部話してくれ。何があったのかを。」
「そうだよ。こっち来て話そ。友達なんだから。」
良平がさらに呼びかけるとそれに合わせて美穂も手招きした。
「・・・・・・うん!ありがとう。」
嬉しさのあまりか、または安心のあまりか、洋子は目じりに涙を浮かべながら笑顔で礼を言って良平たちの近くに座った。
洋子はすべて話し終えると、小さくため息をついた。
それがすべてを話した開放感からなのか、洋子の顔は少なからず緩んでいた。
「なるほどな・・・つまりもともとお前はこのために作られた存在なのか・・・」
「はい。そういう事になります。」
光太郎が呟くようにして言うと洋子は少しさびしそうな表情でそれを肯定した。
「お前のことを何も知らない俺が言うのもなんだけどな・・・お前、クローンだからって自分がこの世界に必要ないとか思っていないだろうな?」
「・・・・・・」
洋子は一瞬驚いた顔をするが、すぐに笑顔に戻る。
「それ、燃にも同じこと言われました。・・・私はせっかくこの命をもらったんだから大事にするつもりです。」
「・・・・・・そうか。だったら何も言うことはないな。」
洋子が固い意志を示すと光太郎は首を横に振りながら安心したようにそう言った。