第110話 心配
「げほっ、ごほっ、げほっ!!」
燃は苦しそうに咳き込み、一息つくと再び立ち上がった。
もうすでに町の中に人の気配はなく、物音一つしない。
しかしそんな静寂もすぐに健一の衝撃波によって砕かれた。
「くっ・・・!!」
燃は腕にエネルギーを纏うとそれを手で受け止め、空に弾いた。
しかし目の前には健一の獣のような真っ黒な腕。
「なっ・・・!!」
ほとんど反射で燃は首を横に反らしてその腕を回避した。
狙いが外れた健一の腕は燃の後ろの壁を粉砕する。
燃が少し体を捻り、健一の腕目掛けてエネルギーの剣を振るうと、少し反応が遅れたのか健一はあっさりと右腕を切り落とされた。
「くっ・・・!!」
すぐさま健一は燃から距離をとって体勢を立て直す。
「お前・・・洋子のことが気になってんだろ?」
「・・・!!」
燃が訊くと健一は表情をゆがめた。
「やっぱりな・・・洋子が俺に殺されていないか心配なんだろ?」
「心配・・・するのは仲間なんだから当たり前だろう?」
「違うな。お前のそれはたとえ死人でも改造してしまったという罪意識からだろう?」
「違うっ!!」
そういって健一はすぐに腕を再生しようとする。
しかし燃はそんな暇は与えず、すぐに地面を蹴って健一に向かって突撃していった。
「はあっ!!」
燃は健一目掛けて剣を横凪に振るうが、すでに見切られていたのか、健一の左腕よって止められる。
「・・・ッ!!」
健一はそのままエネルギーの剣を掴むと、思い切り学校目掛けて投げつけた。
そして続けざまにその燃目掛けて妖気でできた衝撃波を放つ。
「くっ・・・!!」
投げられた燃は飛ばされている途中でエネルギーの翼を作り上げ、それを羽ばたかせ何とか空中に止まる。
が、ろくに体勢も立て直している暇もないうちに健一の衝撃波を受けきれるはずもなく、燃は健一の衝撃波の直撃を受けた。
「がはっ!!」
燃が弧を描くようにして学校内に墜落していく。
健一も腕を再生してから背中に翼を生やし、燃の後を追った。