第109話 問いかけ
「美穂・・・歯を食いしばれ。」
燃はエネルギーで剣を作り出してからそう言った。
「・・・!!」
次の瞬間に何が起こるかわかったのか、美穂は覚悟を極めたように目を閉じる。
そして次の瞬間、美穂の腕の肉の一部が美穂の腕を離れた。
「っ・・・あ・・・!!」
美穂は腕を押さえて苦悶の表情を浮かべながら、あまりの痛さにうめき声を上げる。
「後で誰かに手当てをしてもらえ。」
それだけいうと燃は再び健一の方に向き直った。
そこには先ほどまでと変わらない状態のまま立っている健一の姿があった。
「へえ・・・仲間の腕の肉をそぎ落としておいて表情を変えないとはな・・・ずいぶんと冷酷なんだな、燃。」
「・・・お前よりはな。」
「・・・!!」
燃が健一の問いに簡単にそう言い返すと、健一が一瞬顔をこわばらせる。
「なあ・・・もう止めないか?」
構えを解きながら燃は健一に語りかけるようにしていった。
その顔は真剣そのものだ。
「あ?お前、何言って・・・」
「本当はこんなことしたくないんだろ?」
健一が言おうとした言葉を燃は自分の言葉でさえぎった。
「・・・・・・」
何も言わずに健一は睨むようにして燃を見る。
「お前は嫌々こんなことをしている、お前の顔を見ればそれが分かるんだよ。」
「・・・・・・悪いな。これは俺自身が計画してやったことだ。これに迷いなんてない。」
健一は燃の言葉には耳を貸さず、地面を蹴って燃との距離を一気に詰める。
そしてそのまま剣を振るうが、燃はそれを紙一重で避けてバックステップで再び健一との距離を取る。
その瞬間、一瞬だけ健一の目が燃から逸れた。
それを燃が見逃すはずもなく、すぐに地面を蹴って健一との距離をつめ、健一の腹部に拳を叩き込んだ。
「ぐっ・・・!!」
健一は衝撃に耐え切れずに後ろに吹き飛ばされるが、空中で体勢を立て直して何とか地面にすぐに動き出せる体勢で着地する。
「戦い中に相手から視線を逸らすなんて素人のすることだぞ?」
燃の言った言葉に対して健一は小さく舌打をすると、再び燃に飛び掛った。
それを燃はエネルギーで作り出した剣で止める。
「何か・・・気になることでもあるのか?」
おそらく原因はすでに分かっているのであろう。
燃は意味ありげな笑みを浮かべながら健一にそう言った。
「うるせえよ・・・戦い中にべらべら喋るのも・・・素人のすることじゃないの・・・・・・かっ!!」
燃の腹部に手を当てると、健一は妖気でできた衝撃波をそこから放った。
「が・・・は・・・っ!!」
衝撃によって吹き飛ばされた燃の体はぶつかった衝撃で校舎の塀を崩し、校外にはじき出された。
「はあっ・・・はあっ・・・はあっ・・・!!」
健一は激しく息を切らしながら燃の飛ばされた方向に向かって歩き出した。