第106話 足掻き
「はあっ!!」
美穂は掛け声と共に大剣を上段から思い切り振り下ろす。
しかしその攻撃は健一の妖の腕によって止められる。
健一はそのまま美穂の剣を掴み、校舎に向かって勢い良く投げつけた。
美穂の体が校舎の壁にぶつかると、校舎の壁はその衝撃に耐え切れずにあっさりと崩れた。
「くっ・・・」
気を体中に張っているためか、美穂の体にダメージは無いようですぐに瓦礫の中から美穂が顔を出した。
しかしずっと戦っているためか、さすがに満身創痍だ。
体中のあちこちに傷があり、顔には疲れが見える。
それに対して健一の体は傷を負い、出血をして入るもののすぐに妖の細胞を使って回復してしまう。
はっきり言ってほとんど不死身といっても良い。
「はあ・・・はあ・・・・・・ッ!!はあああああああああっ!!」
少し呼吸を整えると美穂はすぐに気合の声を上げて健一に突撃して行った。
健一もそれを見て身構える。
美穂は大剣を横凪に振るい、健一はそれに対してすでに妖の腕となった腕で裏拳を放つ。
二つの攻撃がぶつかり合うと同時に健一がもう片方の手に紫色のオーラを纏った。
「!!」
美穂がその美穂に向けられた健一の腕を反射で蹴飛ばすと、発せられた衝撃波は美穂をわずかに逸れ、その先にある校舎を破壊した。
一瞬だけ、美穂はその崩れていく校舎に目をやる。
「!?」
その時、美穂はその校舎の中で思わぬものを発見した。
リンと良平はお互いの傷の手当てのため、戦いから少しはなれた場所で合流し、そこで座り込んでいる。
「そうか・・・じゃあ、兄貴は・・・」
良平はすでに諦めていたのか、あまり取り乱さない。
「うん・・・ごめんね。」
リンは責任を感じているのか、申し訳なさそうに言った。
良平とリンの隣には片腕をなくし、応急手当を自分で施している光太郎とすでに息絶えている俊平がいる。
「いや、いいよ。そうするしか・・・方法が無かったんだからな。」
平静を装う良平だが、やはり相当つらいのかその表情のどこかに悲しみの表情が見えた。
「それにお前もお前なりに知り合いみたいだったんだから辛いんだろ?だったら謝る必要はない。」
軽い口調で良平は無理やり笑ってみせる。
「うん。ありがと。」
「・・・・・・どういたしまして。」
リンが礼を言うと良平は少し戸惑った後、ため息をつきながらそう言った。
そして次の瞬間、突然リンの腹から血が吹き出した。
「・・・っあ!!」
リンはうめき声を上げるとその傷を抑えて倒れた。
「なっ!?お・・・おい!!リン!?」
良平が慌てて駆け寄る。
「良平、校舎だ!!」
傷の手当てをしていた光太郎が突然声を張り上げた。
すぐに校舎を見ると、そこには右手がなくなり、顔の皮膚となっていた部分は右半分がはがれて機械の部分が露出している美樹が居た。
しかし左手は無事だったのか、ガトリングガンを良平たちの向けている。
「・・・ッ!!」
逃げようとするが、足の怪我が思いのほか辛いのかすぐには動けないようだ。
そしていくら離れていても相手はサイボーグ。
正確に狙いを定めているのだろう。
「ああああああああああああ!!」
それは気合の声なのか断末魔なのか・・・美樹はどちらとも言えない半分機械化した声を上げた。
良平はガトリングガン相手では無駄な足掻きだと分かっていながらも、ナイフを構えて防御体勢を取った。