第103話 反撃
「ぐっ・・・」
うめき声を上げながら良平が顔だけ上げた。
否、顔しか上げられないのだ。
すでに体力が限界に達し、さらに重りまでついている。
美樹が三階あたりの先ほどの爆発によって開いた穴からレーザー砲を構えている。
あれを食らえば跡形も無く吹き飛んでしまうだろう。
防御体制をとるにしても腕が上がらないし、逃げるにしても足が動かない。
「くそ・・・!!」
舌打ちをして良平が美樹を見ながらそう言った瞬間、いきなり手足が浮いたような感覚にとらわれた。
「!!」
エネルギー充填が完了した。
「それじゃあ、さようなら・・・黒田君。」
ほんの少しだけ悲しそうな顔を浮かべながら、美樹は強烈なレーザーを発射しようとした。
しかし、いつまで待ってもそのレーザーが発射されることは無かった。
そして目の前には少し大きめのナイフを切り上げている良平とその攻撃によって切り落とされた自分のレーザー砲のついている腕。
「くっ・・・!!」
すぐに防御体制をとろうとするがもう遅い。
良平の回し蹴りが美樹の肩に直撃した。
ためらう事無く、良平はそのまま振りぬいた。
重りが外れた状態の良平の容赦ない全力の一撃だ。
美樹の体は机や椅子を巻き込み、その教室の壁を壊し、さらに隣の教室の壁までも壊していった。
いくらサイボーグと言えど、これでは助からないだろう。
「はあ・・・はあ・・・はは、情けね。ギリギリか・・・」
良平はその場で座り込んだ。
「!?」
顔は見えないが、一瞬妖は驚いた様子で辺りを見回した。
そして下を見るとそこにはナイフを振る構えを取っている光太郎の姿が。
否、振りぬいた後の光太郎の姿があった。
見事に逆袈裟が決まり、妖は腰から肩にかけて血を噴出しそのまま倒れた。
「ッ・・・はあっ・・・はあっ・・・死ぬかと思った。」
光太郎がそのまま膝をつく。
さすがの光太郎も疲れたようだ。
「・・・・・・終わり。」
「!?」
突然、妖が口を開き光太郎は驚いた顔で妖に顔を向ける。
その声は案外高く、普通の少女のような声だった。
「私の・・・役目も・・・これで・・・終わ・・・り・・・・・・」
最後にそれだけ言うと妖はそれっきり何も言わなくなった。
「・・・役目・・・?何が言いたかったんだ・・・?」
光太郎はもう警戒する必要はないと思い、妖から視線をはずす。
が、突然、光太郎の動きが止まった。
ある光景に釘付けになっている。
妖の髪のうちの一本が自分の右手首に刺さり、蠢いているのだ。
次の瞬間、光太郎の右手は指先から爆発するようにして破裂すると同時にそこからは大量の血が飛び散った。
まるでそこら辺一帯の血がすべて無くなるかのように・・・
「・・・ッ!!」
光太郎は痛さのあまり顔をしかめるが、それをこらえてナイフを逆手に持つと、何のためらいも無く自分の腕の肘から先を切り落とした。
「あああああああああああ!!」
光太郎の腕が地面に落ちると同時に、痛さのあまり光太郎が絶叫した。