第102話 破壊
俊平がうつ伏せなって腹を抑えてうずくまっているリンの後ろ髪を鷲掴みにする。
「うっ・・・」
そのまま持ち上げると、リンは苦悶の表情をうかべ、うめき声を上げた。
「いやあ、もうそろそろこの戦いも終わりでしょうね。」
辺りを見回しながら俊平がうれしそうに言う。
「まだ・・・終わらない・・・」
「何言っているんですか。明らかに戦況はこっちが有利ですし、いくら頑張ったところであなたは人間だ。その傷は明らかに致命傷ですよ。」
失血により力が入らなくなったのか、リンの左手から剣が落ちる。
そして次の瞬間、校舎の3階あたりで大きな爆発が起きた。
「!!」
俊平がそちらの方を振り向く。
その爆煙の中から良平が放り出されるようにして出てきた。
あの爆発をまともに食らえば木っ端微塵になるはず。
机でも盾にして衝撃を防いだのだろうか。
しかしあの衝撃を防ぎきれるはずも無く、体中がボロボロだ。
もう勝ち目は無いだろう。
光太郎たちの方の戦いを見ても時間の問題だ。
そして目の前には今にも死にそうなリン。
「僕も昔の上司を殺すのは忍びない。どうです?こっち側につきませんか?」
俊平は剣を構えながらリンに尋ねた。
「光太郎さん、良平、あなた、この三人の勝敗はもうついています。美穂も次期に健一に負けるでしょう。そして燃君がたとえ洋子に勝てたとして健一に勝てるとは思えません。
俊平は大きく一息つくと真剣な顔になった。
「正直、この戦いの勝敗は目に見えています。このまま戦い続けても無駄です。今こっち側につけばここにいる5人の命は助けます。」
しばらくの沈黙。
「・・・・・・言いたいのは・・・それだけ・・・?」
やがてリンが口を開いた。
「?」
「私は・・・燃が負けるとは思ってないし・・・皆が負けるとも思ってない・・・だから・・・あきらめない・・・!!」
途切れ途切れだがリンは一言一言はっきりと答えた。
俊平は沈黙している。
やがて・・・
「・・・・・・分かりました。残念です。」
俊平はそれだけ言うと剣の切っ先をリンの心臓に向け、そのまま突きを放った。
「・・・・・・!!」
一瞬何が起こったのかわからなかった。
腕を伸ばしきっても何かに剣が刺さった感触はせず、いきなり掴んでいた髪の毛から重さが抜けた感覚。
そして自分の左胸に刺さっている銃身を鍔とした赤く輝くエネルギーでできた剣。
おそらく光太郎と良平の重りの装置とともに心臓も貫かれているであろう。。
その剣を握っている人物は、腰まであった髪をショートカットにしたリン。
なるほど・・・握られていた髪を切ったのか。
「燃が改造した・・・レーザーガンだって・・・言ったでしょ。」
そう言うとリンはそのままうつ伏せに倒れた。