第101話 限界
重りが重くなり、スピードが落ちてしまった今、光太郎はかなりの苦戦を強いられているようだ。
光太郎を捕らえようと次々と襲ってくる髪。
それをギリギリでかわし、何度か反撃を試みる光太郎。
その攻撃のほとんどがすべて妖の体をすり抜けている。
しかし、当たらないわけではない。
妖が攻撃している最中ならば攻撃は当たるのだ。
「やはりお前、攻撃している時だけは実態に戻るのか・・・?」
光太郎が妖に訊いてみる。
「・・・・・・」
案の定、返答は無く、無言のまま妖の髪が光太郎を襲いだした。
「くっ・・・!!」
やはり重りがかなり重いのだろうか。
髪をかわすにしてもギリギリだ。
それでも光太郎は相手の隙を常にうかがい、隙あらばそれを見逃さずに突いている。
しかしそんな攻防が長く続くはずも無い。
やがて光太郎の息が上がってきた。
「はあっ・・・はあっ・・・はあっ・・・!!」
相手の隙もうかがえず、ただ避けるだけだ。
徐々に足が動かなくなってきている。
ずっと動きっぱなしだったのだから当たり前だろう。
「おわっ!!」
急に足の力が抜け、その場で転ぶ。
受身も取れずに肩から転んだがそんなことは関係ない。
すぐに横に転がって妖の髪を回避する。
痛かろうが何だろうがあれだけは回避しなければならない。
体勢を立て直し、立ち上がろうとするが、疲労のため足が思うように動かない。
「くっ・・・!!」
無理に立ち上がると再び転んでしまった。
そこに妖の髪が追い討ちをかける。
「はあっ・・・はあっ・・・くそっ・・・!!」
動こうとするが、もう手足が動かない。
もうダメなのだろうか・・・
いや、今リンが俊平と戦っている。
戦って、そしてこの重りを解除してくれようとしている。
ならばそれを信用するべきではないのだろうか。
仲間として・・・
光太郎はいつ重りが外れてもいいように手足に力を入れる。