第100話 作戦
燃達の戦いによりすでに半壊し、誰もいなくなったはずの校舎の中。
その校舎の教室の中にうごめく影が一つあった。
「はあ・・・はあ・・・はあ・・・くそっ!!」
嘆くようにしてそう言いながら良平は教室の床を殴る。
「あいつ・・・ただでさえ強いのに・・・何でこんな重りつけながら・・・戦わなくちゃならないんだよ・・・!!」
相当苦戦しているのだろう。
息切れをしており、さらに体中がボロボロだ。
「それにしてもこれ重過ぎる・・・いったい何キロあるんだ・・・?」
自分の手足のついている重りを見ながら嘆くようにして良平が言う。
妖の細胞を使っても重いのだ。
相当重いのだろう。
しかし突然、良平の顔が嘆きの顔から真面目な顔に戻る。
「・・・・・・まてよ。真正面から挑むからいけないんだな・・・」
何を考え付いたのか良平は突然教室の床をナイフで削り始めた。
そしてその作業をしている良平の顔は先ほどと違って元気を取り戻していた。
それからしばらく経った後、良平は先ほどと違って腕を組み、目を閉じて静かにしている。
誰もいない校舎だ。
何も喋らなければかなり遠くの音でも聞こえてくる。
かなり微かだが教室のドアを開ける音が聞こえる。
美樹が良平を探しているのだろう。
「来る・・・」
良平は閉じていた目を開け、音を立てないようにゆっくりと立ち上がった。
それから少し時間が経つと真下からドアの開く音がする。
どうやらこの教室の真下の美樹が来ているようだ。
良平は頃合を見計らい、突然その場から上に跳ねた。
そしてナイフで削っておいた場所に落下する。
削られた床は重りをつけた良平の重みに耐え切れるはずも無く、そのまま崩れて良平は下の階に落下していった。
そこには案の定、何も構えていない無防備の美樹が立っていた。
「覚悟!!」
そう叫んで良平はそのままの勢いでナイフを構え、美樹に突きたてようとした。
しかし・・・
「何!?」
当たったと思ったその攻撃に手ごたえは無く、そのまま良平は床に落下したため、体勢を崩して倒れこんだ。
すぐに立ち上がろうとするが、後ろで気配を感じたためそのまま倒れるようにして横に転がった。
しかし重りのため動きが遅かったのだろう、弾が右足を貫通してしまう。
「ぐっ・・・!!」
良平は激痛により苦悶の表情を浮かべるが、何とか体勢を立て直し、後ろを見る。
そこには右手から変形させたレーザーガンを構えた美樹の姿があった。
「お前・・・あの攻撃をどうやって・・・?」
完全に不意を打ったのだから避けられないはずなのだ。
「ああ、あれね。あれは映像。立体映像だよ。」
美樹が良平の問いに笑顔で答える。
「なるほど・・・映像か・・・」
そう言って良平は何とか立ち上がるが、すぐに壁に寄りかかる。
痛いからではない。
全く力が入らないのだ。
右足を見ると膝にぽっかりと穴が空き、そこから血があふれ出ている。
「そろそろ追いかけっこも終わりにしようか。」
美樹がレーザーガンを構えたままそう言った。
「!?」
良平も身構える。
しかし弾はいつまでも発射されずにその横から何かが落ちてきただけだった。
「・・・?何だこれは?」
「どうせ、レーザーガン撃ってもあんた逃げちゃうしね。」
そう言うと美樹はバックステップで一気に跳び下がった。
「・・・ッ!!」
よく目を凝らして見てみると、そこにあるのは戦争中に良く使われる手榴弾であった。