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貧弱魔王さま、乙女生活を謳歌する  作者: 依馬 亜連
本編

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25/43

25:魔王さまとルロイ

 ルロイ少年には、好きな女の子がいた。

 東洋人らしい儚げな外見で、マフィアのボスのような喋り方をする少女。

 つまりはまゆ子が、ルロイ少年の恋する相手であった。生憎、隣の席に座っているというのに、まゆ子に気付く気配はない。


 それでもルロイは幸せだった。

 時折、一人称が「我」になったり、「力こそ正義!」、「力パワーだ!」などと叫ぶまゆ子だが、そんなところもひっくるめて好きだった。


 一目惚れ、なのだ。


 友人たちからは

「さすがにマユコは、どうかと思うんだ。いや、パッと見はまぁまぁだよ? でも、さぁ……ほら、オッサンくさいじゃん」

などと苦言を漏らされているが、彼は全く気にしていない。


 家庭科の授業が行われている今も、隣を盗み見ては、ひそやかに幸せを噛みしめる。

 そしてちらり、とまゆ子が取り組んでいるプリントも覗いた。


 現在生徒たちは、教師が配ったプリントの上に「理想の間取り」を描いている最中だ。

 ルロイもプリントに、フットサルのコートを備えた三階建ての間取りを描いている。

 本当はサッカーコートが良かったが、さすがに大きすぎる。


 さて、まゆ子はどんな間取りを描いているのだろう。ワクワクとした気持ちで、几帳面に線引きされた図面を見る。


 「拷問部屋」、「実験室」、「玉座」、「贄の間」……間取りには、そんな説明書きが踊り狂っていた。自宅というよりも、悪の組織の秘密基地である。

 まゆ子はルロイの視線に気付く様子もなく、真剣に「武器庫」も書き足していた。


 ちょっとどころではなく、色々と大きく軌道が逸れているまゆ子だが。

 それでも、ルロイ少年は彼女のことが好きだった。

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