天丼は二回までなんだよっ!
今回も話進みません。
ただ、『彼女』を出しておきたかっただけです。
話の展開を求める方は、どうかしばしの我慢をお願いしますw
「……ふむ」
祭りを明日に控えた今日。僕は宿の洗面台で、顔面の薄れてきた痣を気にしていた。
そう。先日リッキーのとばっちりで、タコ殴りにされたときの痣だ。
あのヤンキー風な受付をナンパしたリッキーは、辛辣な言葉で断られた挙句、罵られたらしい。その言葉にプッツンした沸点の低いリッキーは、売り言葉に買い言葉。あの子をナイチチだの絶壁だの男女だのと罵った。そしてあの騒動だ。
……これ、もしかしなくても全部リッキーが悪いよね?やっちゃっていいかな、あの馬鹿。
はふぅ、とため息をついたと同時に、勢いよく部屋の扉が開いた。飛び込んできたのは、言わずと知れた馬鹿。僕と違って治癒の術を持っていないリッキーは、まだ顔面が青く腫れている。
「っよーうリツ!町に繰り出して女引っ掛けようぜぃ!!」
「うるさいよ馬鹿。そもそもそんなパンパンの大福面でどんな女の子引っ掛けるのさ馬鹿。もっと考えてからモノいいなよ馬鹿。それともう2度と僕を巻き込まないでよ馬鹿」
「馬鹿馬鹿言うな馬鹿!馬鹿って言ったらお前が馬鹿なんだぞっ!!」
「はい、キミの方が僕より多く言ったから、キミの方が馬鹿だね」
「あっ!ホントだ、俺様ってば馬鹿!?」
リッキーを馬鹿にしまくることで、なんとか溜飲を下げることが出来た。
今日はちょうど、ギルドに行こうと思っていたんだ。依頼を請けるにしろ請けないにしろ、情報が集まるのはやっぱりああいう人が多く集まる組織だろう。
魔王討伐時代は、酒場がメインだったからなぁ。あそこだと手に入る情報がまばらで、不便だったんだよねえ。時代の移り変わりに感謝だ。
「馬鹿!?俺様って馬鹿なの!?」と煩いリッキーはほっといて、部屋を出る。石造りだからか、少しひんやりとした宿のロビーは、眠気を程よく覚ましてくれた。装飾もなく、花が申し訳程度に活けてある質素な感じの宿で、なかなか気に入った。城とかに泊まったこともあるけど、やっぱりこういう庶民的なほうが落ち着く。
「あ、リツ。起きたのね?おはよっ」
「あぁ、シルヴィア。おはよう」
「だいぶ痣も薄れてきたわね。さすが、法術使えるだけあるわ」
「かじった程度だけど、ないよりはマシだよ」
ホントは、上級法術まで使えるけど、それは黙っといたほうがいいよね。
これでも法術士として頂点に登りつめたウェンディから手ほどきを受けていたんだ。並大抵の実力ではないつもり。
僕は勇者パーティの全てを受け継いだと言っても過言じゃない。ライトからは剣術を、ウェンディからは法術を、ミュールからは魔術を、バーンからは格闘術を。だれか1人が戦闘不能になった場合に、その役割を担えるように、みんなから手ほどきを受けた。
よく言えば多芸、悪く言えば器用貧乏。結局、それぞれ彼らには敵わなかったからね。だけど、戦闘ではオールマイティに動くことを心がけて、全体のサポートをしていた。
っとと、思い出に浸っている場合じゃないな。
「これから、僕はギルドに行くつもりなんだよ。シルヴィアはどうするの?」
「私もギルドね。学院に、手紙を出さなきゃいけないもの」
「そっか、学生だったね。今回の依頼は課題か何かだったの?」
「うん、長期休暇における課題よ。もともと、私はクラウリアの町出身なのよ」
クラウリア……あの厨二満載の石碑がある町か。
あんな恥ずかしい2つ名つけやがったド畜生は、殺して解して並べて揃えて……って、このネタもこっちの世界だとネタにとられないから困るなぁ。
「なにか1つ、ランク相当の依頼をこなすこと。これが課題だったわ」
「それで、あの依頼を請けたんだね。ん?ってことは、シルヴィアはDランクなんだ」
「うん。そういえばリツは?あれだけ強いなら軽くAとか……」
「んや、Eだよ」
「へぇ、E……E!?」
み、耳が……。そんなに驚くことかな?
「なんで!?なんでそんな低いランクなの!?」
「い、いや、この前ギルド加入したばっかりだから。今回が初の依頼だったんだよ」
「ギルドにその歳で初加入……あ、でも山奥でずっと暮らしてたなら、仕方ないのかな……?」
「まぁ、そんな感じだよ」
そう締めくくると、何かを考え込むような仕草をするシルヴィア。
ギルドに加入するのって、普通は12、13歳あたりらしいから、驚くのも無理ないかな。
ただ、僕くらいの年齢になって加入する人も、少ないけど居るらしいし、そこらへんギルド員さんたちは慣れてるよね。今のシルヴィアみたいな対応、されたことないし。
なんとなく納得していると、唐突に顔をあげて、ズイッと顔を近づけてきたシルヴィア。反応が遅れて、自然と至近距離で見詰め合う。
だ、駄目だ……!僕には心に決めt「あのさ!」うん、そんなわけないね。超恥ずかしー。
「リツ、魔術学院に入学してみない!?」
「はぁっ!?」
「だって、今まであまり人と接して来なかったんでしょ?魔術の腕は凄いかもしれないけど、学べばなにかつかめるかもしれないし」
「い、いや、でもねシルヴィア。さすがに年下の子たちと一緒に受けるのは……」
「年下って……リツって何歳なの?」
「今年で20かな」
一瞬、ポカンとした表情になるシルヴィア。徐々に信じられないという顔になっていき、わなわなと口元を震わせる。
……うん。なんとなく次の展開は読めてきた。ここは落ち着いて耳をふさいで、と。オッケー、準備できたよシルヴィア!!
「嘘でしょおおおおおぉぉぉ!?」
宿屋中の人々が、一斉に飛び跳ねた。
*****
ところ変わってギルド。あの後なんとかシルヴィアを落ち着かせて、ギルドへ移動した。その際、当たり前のようにリッキーがついてきているのは何でなんだろうね……?
あまりクラウリアと変わらない造りのギルドで、まわりの石造りの建物の中に紛れて、ここだけは木造だ。なにかこだわりでもあるのかもしれない。
ギルドに来るまでの町の様子だが、少しだけ人が集まってきているような気がする。やっぱり祭りのためにやってきたのかもしれないが、依然として町全体には辛気臭い雰囲気が漂っていた。こんな沈んだ空気で、祭りなんかできるのかな?
「なぁ、いっそ俺たちパーティ組まないか?」
「パーティ?」
「私たち3人で?全員魔術師なのに?」
「おう。いっそ魔術師だけのパーティでも作っちまってよ!戦士職の奴ら、へこましてやらねぇか!?」
「「却下」」
「えー」
何を言い出すかと思えば、案の定ろくでもないことだった。パーティというものは、バランスが鍵を握ってくる。後衛を守る戦士職、前衛のサポートをする法術士、そして溜めは長いが大火力の魔術師。これが基本的なパーティ編成だ。
基本は強い。この基本を逸脱しすぎた奇抜な編成は、意表は突けるかもしれないがそれだけだ。地盤がしっかりしていない以上、瓦解するのは目に見えている。
戦士職になんの恨みがあるのかは知らないけれど、リッキーの案は却下だ。
「結構イケると思ったのになぁ……リツは前衛もできるし」
「「ッ!?」」
「あれで隠してたつもりかよ。身のこなしとか、体捌きとか、明らかに前衛寄りじゃねぇか」
ニヤリ、とニヒルに笑うリッキー。僕とシルヴィアは、知らず知らずのうちにゴクリと生唾を呑み込んだ。互いの顔を見合わせ、1つ頷く。
同じ感想を抱いたであろう僕らは、同じ言葉を口に出すべく、同時に言葉を紡いだ。
「「ボコボコの顔でドヤ顔とか、キモい……」」
「知ってるよチクショオオオオォォォ!!」
泣き叫びながらギルドを飛び出していくリッキーを見ながら思考する。
リッキーは、一見馬鹿だと思っていたけど、ただの馬鹿じゃなかった。少なくとも、ただの魔術師ではない。
おそらくは、前衛の訓練を受けたことのある、特殊な例の魔術師。
これからは認識を改めないといけない、とリッキーの評価を情報修正しながら、目の前の般若に目を向ける。
「まぁたお前らか……扉、弁償してくれるんだろうなぁ……?」
「もちろんさぁ☆」
リッキーが飛び出していくときに、蹴り開けた扉は、壊れて使い物にならなくなっている。
シルヴィアは般若の顔を見た瞬間、僕を置いて逃げやがった。あのアマ。
そして目の前には、先日お世話になったタコ殴りのヤンキー娘。顔がテラ般若。
某ドナル〇の真似をしてしまったのは、精神的に追い詰められてるからかな……?
「まあ、弁償は当然として。悪いことしたガキには、制裁が必要だよな?」
「ななななな、何をおっしゃるウサギさん!?」
「なっ……て、てめぇなんであたしの名前をっ!?」
「マジで!?」
「恥ずかしいからその名で呼ぶんじゃねぇ!!」
「ごぶふっ」
うん、また前回と同じ展開。そのままフルボッコされて、ギルドの外にペイッと出されました。
情報収集に行ったのに、得られた情報はヤンキー娘の名前がウサギちゃん(笑)だということだけ。
とりあえず……リッキー殺す。
やっぱり、割を食うのはいつもリツですw
ウサギちゃんです。クラスは格闘家。
勘のいい人なら、この後の展開が読めてきそうで怖いですねw
次回、ついに神降臨。その神を見たリツは……!?