見た目で判断するな……足元掬われるぜ?
次話へのつなぎ的な話なので、ちょっと短めです;
でも、この物語の根幹に触れてくる部分でもある……ような気がしないでもないような。
「照りつける太陽……輝く白い砂浜……キャッキャウフフの水着美女!やってきました、港町アーセナル!!」
「実際はどんより曇り空にオキアミの腐った匂い、おまけにミャーミャー煩いウミネコだけどね」
「なんっでだよ!!太陽は!?砂浜は!?俺を待ち受ける美女hごふっ」
「うっさいわよ馬鹿」
ついにやってきた港町アーセナル。だけどそこは、予想よりも遥かにしけた町だった。
規模で言うとなかなかに大きな町だろう。前の時代にはなかった、石製の民家も出来ている。魔王討伐時代(便宜上こう呼称することにした)は、城とか以外は全部木製だったからね。
一本の大通りを中心に、店屋が連なり、そこから外へ向かうにつれて民家が多くなっていっている。かつては栄えたんだろうと、思わせる造りだ。
現在は通行人すらもまばらで、時々店先の掃除でもしているのだろう店員が姿を現すくらいである。見ていてなんだか、生まれ育った世界のシャッター商店街を連想させた。
海風に乗って漁港特有の腐臭がして、思わず顔をしかめる一同。そんな中、馬車の御者をしていたマーカスさんが、陽気に片手を挙げて言い放った。
「やや、ありがとうございました皆さん!おかげで無事にたどりつくことができましたよ!報酬のほうは、ギルドに渡しておきますからね!」
「いやぁ、竜種に出くわした時はどうしたもんかと思ったが、運よくドラゴンキラーが通りすがってくれて助かったな!ま、俺様が本気出せばあんな奴簡単に(ry」
「「…………ッ!」」
「そうです!私たちを助けてくれた旅のドラゴンキラーさんたちにもお礼をしなくてはなりませんね!シルヴィアさん、本当に彼らの顔を見なかったのですか?」
「み、見てないですね……」
「残念ですなぁ。ではでは、私は商業ギルドに品物を納品しなければならないので、失礼しますよ」
がっはっは、と豪快に出っ張った腹を揺らし、去っていく依頼人。その後姿を見送って、隣のシルヴィアと一緒に安堵のため息を漏らした。
そう。前回の大暴れだが、気絶から立ち直ったシルヴィアに口止めする際、竜の亡骸である黒こげのナニカをどういいわけするのか、ということになった。
あーだこーだ言って、結局旅のドラゴンキラーが退治してくれた、ということになったのだ。
ドラゴンキラーとは、この世界に昔からある、竜種退治を生業とした集団の総称のことだ。大体7~8人の団体で、彼らをドラゴンキラーの一チームと数える。
僕らも魔王討伐時代、たったの5人で最上級竜種『エンシェントドラゴン』の番を討伐したため、最強のドラゴンキラーとして認められていた。まぁ、あのときはかなりギリギリだったけどね。そして僕らのチームにチーム名が……いや、ライトの残念なネーミングセンスの記憶だし、これも後々思い出すとしよう。
とにかく僕とシルヴィアの口裏を合わせた嘘に気づくことなく、リッキーとマーカスさんは旅を再開してくれた。ホントにバレるかどうかドキドキだったよ。目立ちたくないでござる!
「でもよぅ、なんだか思ってたところと違うなぁ。祭りがあるって話だったが、まるで活気がねえじゃんか」
「あ、リッキーも知ってたんだ、お祭りの話。土地神降臨とか胡散臭いことこの上ないことを謡い文句にしてるあたり、興味をひかれるよねー」
「……?えっと、リツ?『神』が降臨するのなんて、そんなに珍しくないことじゃないかな……?」
「…………ゑ?」
え?いやいや、ちょっと待って。神が降臨するのが、『そんなに珍しいことじゃない』!?
シルヴィアの言葉を理解するのに、少し時間を要した。どういうことなのか、さっぱりだ。
僕の訝しげな顔に疑問を持ったのか、さらに困惑の色を強くしてシルヴィアは説明する。
「え、えっとね。今から約800年前、魔王城のあった辺りに始まりの神『エリクシル』が降臨したの。荒廃した世界に救いをもたらすとかで。それで、それ以降各地で神の降臨が繰り返され、今の緑豊かな世界になったのよ」
「ってか、今の子供だって知ってる歴史だぜ?リツ、お前どんだけ田舎に住んでたんだよ」
「あ、あはははは……山奥に1人で住んでたから、常識には疎いんだ……」
「「…………」」
「うっ」
なんだか2人からの視線が妙に優しい……っ!
その優しさがつらいんだよ……っ!
「ご、ゴホン……ここの土地神は割と有名で、青の神族『アーセナル』ね。町の名前は、この土地神の名前から取っているのよ」
「んで、年に一回のここの祭りってったら有名なんだが、実際に来てみるとなんだか寂れてやがるってわけだ。祭りがあるんだから、もっと活気のある町だと思ってたんだがなぁ」
「ふぅん。ありがと2人とも、説明助かったよ」
「兄貴に」「お姉ちゃんに」
「「任せなさい」」
そんなに僕は童顔ですかチクショーッ!!
*****
とりあえず、3人一緒に冒険者ギルドへと足を運ぶ。報酬をもらうためだ。
受付にいるゴツイ筋肉隆々のお姉さん(!?)に、依頼達成の報告をする。
「はい、伺っております。依頼主はマーカス様でございますね?こちらが報酬の、50ベヘモス銀貨です」
「あ、ありがとうございます……」
「ランクは変わらずEでございますね。より一層のご健勝を心よりお待ちしております」
「ど、どうも……」
見た目からは全く想像のつかない丁寧な対応に、とても戸惑ってしまった僕がいた。
だって、声なんか鈴を転がしたような綺麗な声なんだよ!?外見は「ぶるぅあああああぁぁ!!」とか「ふぐ〇くぅん」とか言いそうな顔なのに!
予想外にもほどが「おるぅあああああぁぁぁ!!」……え?
「ぎゃああぁぁ!!」
「死ぃね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねええええぇぇぇぇ!!」
勇ましい声の発生源に恐る恐る目を向けると、そこには……。
一見かわいらしい小柄な受付の女性が、般若の形相で茶髪を振り乱し、リッキーのマウントポジションを取ってタコ殴りにしていた。
「だぁれが彼氏も居そうにない生涯独身ペチャパイ男女だってぇ!?あたしだって好きでこんな体に生まれたんじゃないわああぁぁっ!!」
「ぎゃああっへぶっ!助けぐへっ!り、リツごぱっ!!」
「てめぇもコイツの仲間かああぁぁぁ!!」
「うわっ、こっち来た!!」
「待ぁてゴラアアアァァァァ!!」
「何で僕まで巻き込まれてんのさあああぁぁぁ!?」
かわいらしい声で丁寧な対応のマッチョ女(?)と、かわいらしい容姿で暴力の嵐なヤンキー女(?)。
ここのギルド支部、どうなってんn(グシャアッ
ポーン。
リツさんがログアウトしました。
いよいよ規模が大きくなってきました。
神(笑)
作者の厨二も天元突破のようです。
さてさて、風呂敷を広げまくりましたが、なんだか畳める気がしないぞ、これ;
まあ、大体の構想は練ってるし、大丈夫……だよね?