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時と世界を越えた魔法剣士  作者: 甘党代表
最強の魔法剣士
3/14

魔法の言葉、ハーバマ

主人公・リツのキャラ付けは、巻き込まれ系不幸青年です。

神から見放されたといっても過言ではない神浄の討魔さんより、ある意味タチが悪いかも……?

 目覚めた森に程近い町、クラウリア。この町にたどり着いて感じたのは、違和感だった。




「(名前も聞いたことない町だな……もしかして、相当辺境に飛ばされた?)」




 木々の暖かさを感じる建物と、穏やかに生活する人々。見たところ様々な種族が生活しており、種族間での争いなどはないようだ。少し、安心した。


 だが、なんだろうかこの違和感は。こう、知っているのに知らないというか、目の前にある答えになかなかたどり着けない、もどかしさ。


 ……いつまでも悩んでいても仕方ない。とりあえずは情報収集といこうか。


 僕は宿屋に隣接する酒場へと、足を踏み入れた。




「いらっしゃい。旅人さんでしょうか?」




 中は全体的に明るく、落ち着いた雰囲気の流れるバーだった。壮年のマスターが醸し出す雰囲気に、マッチしている。昼時ということもあってか、バーには客がまばらであった。


 スーツに、キュッキュッとグラスを磨く様子は、まさしくバーという感じである。




「えぇ、まぁ。いいお店ですね」


「ふふ、ありがとうございます。ご注文はいかがいたしましょう?」


「マジックカクテルを」


「かしこまりました」




 少し経って出されたのは、青と緑が幻想的に混ざり合う、なんとも不思議なカクテルであった。魔法を使用した特殊な製法で作られ、その店その店で味が違うという代物である。


 僕は香りを楽しんだ直後にグラスを傾ける。さっぱりとした味わいで、ほんのりと果実のような甘みがある。いい味に機嫌をよくしながら飲み干し、情報を聞きだすことに。まずは、アーガルド大陸がどの方角か、だな。




「マスター、聞きたいことがあるんだけど」


「なんでございましょう」


「アーガルド大陸って、ここからだとどの方角かな?」


「うぅむ、ここがリセリア大陸ですので、アーガルドの地ならば北東でございましょうな……旅人さん?」




 ………………は?いや、え?


 え、ここ…………リセリア、大陸……?


 いやいやいやいやいや、ちょっと待とうか落ち着け僕。リセリア大陸?ここが?


 魔王城・・・があって、魔物の巣窟・・・・・となっているはずの、リセリア大陸?




「どー、なってんの……」


「はぁ、なにか問題でもございましたかな?」


「あ、いやいや」


「てっきり旅人さんも、この町にある石碑を見に来たのかと」


「……石碑?」


「魔王が討伐され、この世界に平和の灯火が宿った、記念碑でございますが……ご存じなかったので?」


「あっ……あ、あぁ~、その石碑ね、うん。知ってた、知ってたよ?」




 魔王が討伐され、世界に平和が?もしかして、僕が目覚めたのって、魔王討伐からだいぶ後なのかな?


 少なくとも、あの荒廃した大地が、今みたいに緑でいっぱいになるわけだし。相当の年月が経ってるんじゃないか?


 ……とにかく、その石碑を見てみよう。




「ありがとマスター、これ代金。釣りは取っといて!」


「あ、はいありがと……ッ!?」




 後ろからなにやら驚愕した声が聞こえてきたけれど、今は構っている余裕がない。少し本気で、町を走り抜ける。途中、こちらを驚いて振り向いてきた人たちもいるが、今は全く気にならなかった。


 町の中心に、大きな広場を見つけた。見たところ公園のようになっていて、子供たちがのどかに笑っている姿が見受けられる。その広場のさらに中心に、黒い大きな石碑がたたずんでいる。


 胸が、バカみたいに鳴り響く。脳が碑文を読むことを拒否する。だが、僕はそれらを強引に押さえつけ、読んだ。否、読んでしまった。




『アーガルド暦1673年


 創造神の息子、娘である我ら民草は、ここに平和の礎を築いた者たちへと敬意を表する。


 紅剣の勇者   ライト=ミレフィス=アーガルド

 癒しの姫巫女  ウェンディ=フライヤ=アーガルド

 黄昏の大魔導師 ミュール=クーヴィア

 鉄腕の拳帝   バーン=オルガ


 そしてその身を犠牲に世界を救った大英雄。

 蒼空の魔剣士  リツ=ハーバマ


 2度と、この世界に闇が降りぬことを願って』




 うん、まずは言わなきゃいけないことがあるよね、うん。


 いつの間にか大英雄なんてものになってるし、みんなに厨二な二つ名ついちゃってるし、僕らの最終決戦はアーガルド暦1147年だし、それよりなによりライトとウェンディ結婚してるしおめでとうって、今はそんなことどうだっていいんだよ!


 あのね、世界のみなさん。僕は…………僕は………………!




「僕の名前は……ハヤマだ!ハーバマなんて名前じゃねえぇぇぇ!!」




 苛立つような蒼空に、僕の魂のシャウトが響き渡った。冗談じゃねぇ。

Side 残されたマスター




「…………どうすればよいのでしょうか」




手元に残されたのは、あの魔導師風の少年が残していった硬貨。アーガルド暦1000年鋳造の、バハムト銀貨である。


現在使われているベヒモス硬貨よりもはるか太古の時代に使われた硬貨である。それも、あの救世の勇者たちの活躍した時代の。


彼はこの硬貨が、どれほどの価値を有するのか理解しているのでしょうか……?


骨董商や貨幣商など、持って行くところに持っていけば、大金を積んでもらえるでしょうに。


実際、彼の飲んだマジックカクテルの価格はベヒモス銅貨5枚である。これでは、私ばかり儲けてしまっては居ないでしょうか?


仕方ありません、これから彼が来店した折には、持て成せる最高のサービスを心がけさせていただきましょう。

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