若き王と古王国の最期
長いことあけて申し訳ありません!
ちょっと最近忙しすぎまして……;;
コメントでも励ましのお言葉、ありがとうございます!!
これからもかなり不定期ですが、更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします!!
では、今回は新章の導入部分です。
少し短いですが、よろしくお願いします。
アーガルド王国首都、王都アーガルド。その中心にそびえる巨大な王城では、多くの人々が慌しく動き回っていた。
王城の一室に設けられた会議室。その上座でアーガルド王国の若き王、ホープ=ルーイッド=アーガルドは、妙に清清しい表情で宣言した。
「よし、みんなで死のう!!」
「「「「「おやめください!!」」」」」
「……………………………………………………いや、冗談だよ?」
軍の将官たちは一斉に思った。コイツ本気だったな、と。
王家の伝統である赤毛を携えたこの王。表面上はポジティブに見せていても、実質はとてつもなくネガティブという厄介な性格をしている。これまでに自殺を図ったことは数知れず。為政者としての能力は申し分ないものの、性格……というよりもはや病気で、全てを台無しにしている男である。
しかし、こんな性格にしたのは、ある意味時代のせいと言ってもいいかもしれない。1000年以上の長き伝統を誇るアーガルドも、敵対国家であるトゥグルス帝国によって、終わりを迎えようとしているのだ。
長い間続いた戦争により、国民はもう疲れ果てている。何をやっても無駄だという絶望にとらわれ、無気力になってしまった。自分が王として頑張っても、いつしか無駄だと思うようになってしまい。結果、後ろ向き根暗王が誕生。
アーガルド王国の最期は、近いかもしれない。
「さて、国境付近の帝国兵たちに動きは?」
「はっ!わが国最東端の砦、鉄壁を誇るデルニクス砦が落とされました!!」
「バカモン!なぜそれを早く報告せんのだ!?」
「はっ!3日前に報告しようと思っていたのですが忘れていまして、タイミングをなくして言い損ねた次第です!!」
「ええい、3日前だと!?それではもう、この王都に攻め入ってくるのも時間の問題……」
…………ッバアアアアアアアアアアアアアアン!!!!
恒例となっている宰相シモン=リガール=ツァイグと、その副官ボネッサのやり取りの直後。凄まじい轟音が鳴り響く。
慌てたホープは、窓から城下を眺める。王都を囲むように展開した帝国軍によって、完全に包囲されている光景が視界に入った。
「……はは、ハハハハハ!世界の終わりだあああぁぁ!!ヒャッハー!!」
「へ、陛下が壊れたぞ!!」
「誰か医務室へ!!」
「ヒャハハハハ!!」
「くっ、なんて気持ち悪い動きだ!!」
ビタンビタンと上半身をくねらせ、気持ち悪い動きで発狂するアーガルド王を、将官たちは慌てて運び出す。やがて慌しい足音は消えていき、シモンとボネッサだけが部屋に残された。
しばしの沈黙のあと、ボネッサが口を開く。
「さて、あの根暗王の首を取る前に、例のものを探さないといけませんね」
「ああ。この5年間、ずっと用意してきたのだ。ここに来て見つかりませんでした、では、皇帝閣下に示しがつかん」
「くっ……長かったです……!ここで無能を演じきるのは……!」
「いや、お前はあれが素だろうに」
「……さて、ようやくおいでになったようですし、僕たちは帝国兵を迎えに行きますか!!」
*********
なんとか正気を取り戻したアーガルド王は、城から首都全体を見渡せる場所、展望台に向かった。城内ですれ違う人々はもはや、1人で幽鬼のようにふらふらと歩く王に目もくれない。誰もが焦り、後悔、絶望の表情を浮かべて、走り回っているのだ。
その姿を見ながらアーガルド王はふと、昔、まだ前王である父が生きていた頃を思い出す。
『いいかいホープ。遠い遠い昔にね。私たちのご先祖様は、仲間たちとともに魔王に挑んだ勇者様だったんだよ』
『勇者、さま……?』
『そう。折れぬ心で何度も立ち上がり、光の剣で魔を切り裂く。お前はその勇者様の血を受け継いでいるんだ。だから、お前も立派な王になるんだよ』
『えー、嫌だ!!』
『えぇっ!?』
『だって僕、王様なんかなりたくないよ!僕は、勇者さまになる!!』
『……はっはっは、そうかそうか』
……随分と懐かしいことを思い出してしまった。アーガルド王は頭を軽く振ると、展望台の頂上を目指して、再び歩き始めた。
勇者になりたいなどと言った、かつての愚かな自分を思い出して自嘲の笑みを浮かべる。
「全く、我ながら呆れたものだね。自国の民ですら守れず、何が勇者か。何が王か」
視界の全てが開けた展望室。そこから見えるのは、トゥグルス帝国の兵士たち。彼らは遠目に見ても分かるほどの豪奢な出で立ちをしている。見間違えようもないのである。
トゥグルス帝国兵たちは、城下町全てをぐるりと囲む塀の外は、一面が帝国兵で囲まれているのだ。閉鎖した門は、一際大きな杭のようなもので、今にこじ開けられようとしている。
アーガルド王は笑った。それはもう、自分の愚かさを嘲るように、責めるように、狂ったように。
アーガルドの若き王は、そのまま強い衝撃と共に意識を失うまで、狂笑を続けたのだった。
この日、1000年以上も続く、伝統ある大国『アーガルド王国』は、その歴史に幕を閉じたのである。
さて、実は私、スランプになりまして。
全く筆が進まない状況が続いている訳であります。
しばらくは超・遅筆になると思いますが、どうか見捨てずに付き合ってやってくださいorz