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時と世界を越えた魔法剣士  作者: 甘党代表
最強の魔法剣士
13/14

旅立ちは異臭に彩られて

この話で、とりあえず1章は完、です。


というか、クオリティが低下している……orz


なんとかせねば!

 港町アーセナルを脱出してから早ひと月。ただひたすら北上して、ようやく大きな港町にたどり着いた。このリセリア大陸とも、ついにお別れなのである。思えば魔王を倒すために前の時代でこの大陸に上陸してから、時空移動してからも合わせて半年以上になる。そう思うと、なんとなく感慨深い。




「おい、師匠。次はどこに行くんだよ?」


「ルクレール魔法大国の、王立魔法学院。ここからちょうど北の方角だね」


「うへぇ、年中銀世界で有名な、あそこかよ……」




 まあ、シルヴィアやリッキーとの約束がそこだから仕方ない。本当は、このまま北東のアーガルド大陸に行きたいんだけど。


 そうそう、この前世界地図をちらっと見る機会があったんだけど、どうやらところどころ僕が知っている大陸名と変わっているみたいなんだよね。アーガルド大陸とか、ルクレール魔法大国のあるセルヴァ大陸や、このリセリア大陸は変わってないみたいなんだけど。かつて暗黒大陸と呼ばれていた場所にいたっては跡形もなくなっているし。


 暗記するまで読むことは出来なかったけど、暗黒大陸が消滅している以外は、少なくとも大陸の位置が変わっているなんてことはないみたいだ。さすがに、1000年くらいじゃ大陸そのものが大きく移動したりはしないよね。……ホントに何があったんだろう、暗黒大陸。


 ここ最近どんよりと曇っていた空も、今日はカラッと晴れている。海から吹きつける潮風が、髪をたなびかせて清清しい。




「んっと……あ。師匠」


「どうしたウサギちゃん?」


「あのさ、言いにくいんだけど……」




 僕より先行して、船の便を見ていたウサギちゃんが、なぜか困ったような声をあげる。




「ここの船、セルヴァへの便はないみたいだぜ?」


「…………」




 セルヴァへの便はない……ということはルクレールに行けない……仕方ない、アーガルドへ行こう!


 ポクポクポク……チーン!!




「進路変更、いざアーガルドへっ!!」


「おいおい、いいのかよ。仲間がルクレール魔法大国で待ってんじゃねえのか?」


「何をおっしゃるウサギさん。北のセルヴァに行けないなら、北東のアーガルドを経由すればいいじゃない……ッ!」


「な、なるほど……?」




 そう、元々アーガルドには行こうと思っていたんだ。それが少し、早まっただけ。


 親友たちの末裔が、どんな風に国を治めているのかも気になるし、ね。


 というわけで、さっそく2人分の運賃を払って乗船。いざ、アーガルドへっ!!






 *****






「………………うぇぷ」


「大丈夫かウサギちゃん」


「………………ム、リ」


「うわぁ」




 船に元気よく乗り込んで2時間。大海原を進むこの船は、北東のアーガルド大陸を目指している。立派なつくりの大型な船で、動力は魔石だ。


 魔石とはその名の通り、魔力を豊富に宿す石のことで、天然の魔力の力場において生産される。自然発生型の化石燃料みたいなものだ。まあ、石油みたいに膨大な年月がかかって作られるものではないが。せいぜい、10年20年といったところだろう。


 そんなわけで、この船は魔石のエネルギーから推進力を得て、前進しているのだ。


 風を受け、ごうごうと音を立てて海原を突き進む姿は勇壮の一言。次々と甲板を走り回る船乗りたちは、日に焼けた屈強な姿を見せ付ける。時折みせるキラリと白い歯は、浅黒い肌と対比して余計に白く見えた。




「はぁ、はぁ。なん、で、こんな、に……揺れるん、だよ……」


「あちゃぁ、ウサギちゃん乗り物ダメなんだね」


「揺れに加えて、ウプッ。ガチムチ、のおっさんたちが、汗光らせて……ううぅぅっ!……甲板を踊り狂ってたら、吐き気も……す、す、するうぅぅ……」


「うわっ、やめっ……今までスルーしてきた光景が、急に気持ち悪く見えてくる!!」




 だが、このように荒っぽい運転では、船体が揺れる揺れる。さらに船乗りたちは、モップを片手に甲板を走り回る。確かに、少し刺激の強い光景だ。いや、船乗りたちは掃除しているだけで、別に踊り狂ってはいないんだけれど。そしてたまに聞こえてくる、暑苦しい掛け声が、拍車をかける。


 ついにウサギちゃんは、ダウンしてしまった。脂汗の噴き出た青白い顔で吐き気をこらえる様は、とてもじゃないが女の子には見えない。




「ヴウゥゥ……も、もう限界……オロロロロ!」


「うぐっ、も、貰いゲロだけはしないぞ……」


「オロロロロロロロロ!!」


『面舵一杯!ヨーソロー!!』


「う、う、うぷっ」




 慌てて青く輝く海面に、ウサギちゃんはバーストする。それを見て背中をさすってあげてた僕も、つられて吐き気を催してしまった。


 しばらくの間、この駄目師弟コンビは、清清しい大空の下、母なる海に向かって盛大に……。






 *****






 空が夕日で赤く染まる頃、船はアーガルド大陸の港、グリンバラ港へと到着する。地に足をつけた途端、2人の男女は安堵のため息を同時に吐き出した。……もちろん、僕とウサギちゃんだ。


 乗船前と後でやつれ具合が半端じゃない。げっそりした足取りで、ここから数里先にある王都アーガルドへと歩き出した。




「それにしても……」


「ん?どうした師匠。なんかあったか?」


「んや、なんでもないよ」




 港に着いたときから思ったんだが、人々の活気がない。帝国とやらと長い長い戦争状態で、国自体が疲弊しているのかもしれないが……。


 それとはまた違う、生気のなさが気になる。すれ違う人みんな、死んだ魚のような目をしているのだ。


 昔は整備されていたであろう、荒れた街道を歩く。建て看板を見る限り、このまま道なりに進めば、王都アーガルドへは半刻もしないうちにたどり着けるだろう。




「うぅん。なんか、気味悪ぃ国だな、ここ。この前のアーセナルみたいだぜ」


「あぁ、確かにあそこと似てるね。ただ、ここはあそこと違って生きる気力をごっそり抜かれたみたいだ。やる気が湧かない、どうせやっても意味がない。そんな感じの、どこか諦めの入った暗さだよ」


「なるほどな。アーセナルの人たちは、操られていたときこそ人形みたいだったけれど。神が降臨したときの熱狂ぶりとか、こことは細かい差異があるよな」


「そんな意味では、ここのほうがアーセナルより不気味な気がするんだ。ウサギちゃん、僕から離れないようにしてね」


「うぇーい……あーあ。こんなことならグリンバラ港で、セルヴァ行きの船が出るまで待っときゃよかったぜ」


「まあ、その船が出るのは少なくとも1ヶ月後らしいけどね」




 そう。すぐさま乗り継げなかったのは、定期便がしばらく運行を停止するからだ。理由はわからないが、これによりセルヴァへの便は出なくなってしまった。元々、なんとかウサギちゃんを説得してアーガルドへ寄ろうと思っていた僕だったが、なんとなく嫌な予感がする。


 このまま、アーガルドに向かっていいのか……?




「……えぇい、なるようになれ!」




 まあ、考えても答えが出ないものは仕方ない。僕はアーガルドで、僕らの始まりの地で、何が起こっているのかを確かめるだけだ。






 ……だが、考えてもいなかった。ここで思いもよらない再会と、別れがあるとは。


 僕がなぜ、この世界に呼ばれたのか。僕がなぜ、この時代へジャンプしたのか。


 すべてが分かるのは、いつになるんだろうか。

次章予告!


セルヴァ大陸に向かっていた律とウサギちゃんは、思いがけずアーガルド大陸へと上陸してしまった。そこで出くわしたのは、生気のない人々と、変わり果てたかつての……。




「なぜだ……なぜお前が……!」


「くっ、師匠……逃げてくれ……」


「あら、やっぱりあたしがいないとダメね、あんたは」


「未完成の魔法剣……今ここで、完成させる!」




乱れ打つ魔法、飛び交う厨二!悶えるリツ!!


最後に立っているのは誰か。そして物語は、加速する……!




なんて予告しちゃったけど、この通りに行くかなんて分からないのさ、ウシシ。

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