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時と世界を越えた魔法剣士  作者: 甘党代表
最強の魔法剣士
11/14

厨二と言われようがガチバトル

難産でした;;

なんというか、シリアスでまとめようとしてるのに、絶対ボケ入れちゃう。

話的には結構ダークなのに;;

 海が一望できる砂浜。立ち上る魔力の奔流。その起点には、目を閉じたウサギちゃんの姿があった。青いオーラを纏うその姿は、禍々しさと同時に、どこか神秘的でもある。


 遅かったか。駆けつけた僕は、ここで組まれている魔術の術式を解析するために目を凝らす。




「……ウサギちゃんの体に、膨大な魔力が集まって……まさか、これは!?」




 ウサギちゃんに何かをしたのかと思ったが、コレはどうやら、神とやらがウサギちゃんの体に入ってこようとしているみたいだ。規則性のない、濁った魔力が、海から際限なくウサギちゃんの体に入り込む。すでに、彼女の意識はない。


 一際強く魔力が発光すると、奔流と共に吹き荒れていた風は収まっていく。そして、再び目を覚ましたウサギちゃんは、もうすでに別人と化していた。なにより分かりやすい変化は、普段は赤い瞳が、青くなったくらいか。




「アーセナル様が、降臨なされたぞーッ!!」


「「「「おおおおぉぉぉ!!」」」」




 どこら辺から正気に戻っていたのかは知らないけれど、町の住人たちが歓声を上げる。彼らはどうやら、これが当然のことだと思い込んでるようだ。それが暗示なのか、または別の理由からかは、知らないけれど。


 なんにせよ状況を見るに、完全にみんな、この目の前の自称・神の信者みたいだ。これは……骨が折れるな。






 *****






 そして、前回の冒頭に戻る(メタ)。


 魔王の残滓。強烈な魔力。多勢に無勢。脳裏に単語が浮いては消える。


 目に見える限りで、ざっと住民は50人以上。そして全盛期の魔王と遜色ないように感じる目の前の自称神。


 なんで欠片のはずなのに、元と同じくらいに力を取り戻しているのだろうか。……って、答えは信仰か。


 人の祈りや想いの力は強い。それこそ場合によっては、不可能を可能にすることくらいは造作もなく出来てしまうほどに。


 そういえば、遥か昔(って言っても僕からしたら2、3年前だけど)に、神降ろしの巫女って言うのがいたなぁ。あの一族にしか受け継がれず、膨大な力を受け入れるが故に短命な一族だった。もしかして、それと同じ現象だったり?




「やれやれ……一応聞いておくけど、あんたが乗っ取ってるその娘の体、どうする気?」


『どうもせぬ。そも、我はこの世に数刻も顕現できぬ故、問答をしている場合ではないのだ』


「……あ、マジで?」




 ぼんやりとした目でこちらを見つめるウサギちゃんの瞳に光はなく、口がひとりでに動いているような印象を受ける。その真っ赤な唇から洩れ出る声色は普段の乱暴なものではなく、暖かくも冷たい、感情を読ませない口調に変化していた。


 ……ってかあれ?もしかして、これって僕何もしなくていいんじゃない?


 ウサギちゃんに危害がないんなら、別に問題ないだろうし。やり口が気に入らないけれど、無事ならいいよね。


 そもそも、神が胡散臭いってだけで、この大陸の人たちみんな普通に生きていけてるし。魔王の残滓があるだけで、魔王みたいに全世界を混沌に陥れようなんてしてないみたいだし。


 うわ、じゃあ僕、その人がただ怪しいってだけで殺そうとした、頭のおかしい人じゃん。恥ずかしいわぁ……まぁ、生前の魔王を知る人なら、魔王の魔力感じれば誰だってこうなるだろうけど。




「でも、ならなんで姿を現したんだ?理由がないなら、他人の体を使ってまd」


「アーセナル様!この子とこの子が、今年生まれた赤子にございます!」




 僕が質問を続けるのを無視する形で、横から入ってきた女性が腕に抱えた2人の赤ん坊を神に差し出す。どうやら、神が顕現した理由が、見られるらしい。


 神はひとつ頷くと、指を赤ん坊の額に当てる。すると、それぞれの赤ん坊の額には、魔法陣のようなものが浮かび上がって、消えた。咄嗟に解析したけれど、なんの効果があるかとかは分からなかったな。結構、巧妙に隠蔽されていた。そしてありがたがる人々。


 ……明らかになにかあるだろ、あれ。この時代の魔法レベルからして、解析とかできないのが大半な気がする。なんでこんなに世界のレベルが下がって……いや、『神』が意図的にやったとかか?自分たちに逆らう力を、人類が持たないように。


 こりゃ、しっかり読み取った方がいいな。どうやら額に施すようだし、適当な住民の額を見てみるか。




「…………ん?…………ッ!?」




 そして、気付いた。気付いてしまった。この広場にいる住民全員の精神力が、ウサギちゃん……正確には彼女に宿った神の中へと取り込まれていっている。


 少し覗いただけだが、あの魔法陣はおぞましすぎる。黒い魔力の化け物が、人間の体内を喰い散らかしているのだから。


 全身の皮膚に鳥肌が立った。そう言えば、この集まっている人たちはなんだか、実年齢よりも老けているように感じていたのだ。


 そして、この『神』に自ら自分たちの生命力を差し出す住人たちに、怖気を感じた。なんというか、この町の人たちは……人間じゃない。そう感じるのだ。




「あのさ、カミサマ」


『なんだ、太古の怨敵よ』


「僕、あんたがしている小細工、分かっちゃったよ」




 やっぱり。僕のことは知ってるんだね。なら、話は早い。


 これからするのは、僕の自己満足。住民の人たちからすれば、ありがた迷惑かもしれない。なんせ僕がなにもしなければ、少なくとも寿命が尽きるまでの間、なにも知らないまま生活して、また何も知らないまま死んでいくのだろうから。


 だけど、このまま自称『神』が人々の命を我が物顔で吸い尽くしていくのを見ることは、できなかった。命をかけて守りぬいたと思っていたこの世界の平和が、僕らみんなの想いが、汚されているように思えるから。


 なら、やっぱり僕は僕のワガママを貫き通そう。世界が敵?上等。相手は神?上等。何も知らない連中は僕を神殺しだと責め立てる?……じょ、上等ッ!!


 殺し損ねたこの外道野郎を、今度こそ完膚なきまでに叩き潰す。


 油断もなにもない。最初から最強の魔法剣で、一撃で、仕留めてみせる。




 さて、今回のこの邂逅で知り得た、この時代の現状を纏めよう。


 まず、僕らが倒したと思っていた魔王は、いくつもの欠片になって散らばり、それらは神と自称する化け物になった。


 いつからかは知らないけれど、この自称神は口八丁で民衆を騙し、人々から生命力を吸い取っている。これは間違いない。


 その神(寄生虫)は、今現在ウサギちゃんにとり憑いてる状態で、迂闊に手を出せない。


 何より問題なのは、民衆がそれを自らすすんで受け入れていている節があり(まぁ、実態を知っているかは別として)、ここで僕がこの寄生虫野郎をぶち殺しても、悪者になるのは僕だということ。


 また、コイツのように各地に存在する神(寄生虫)が、各地で同じようなことをやっている可能性が高いということ。あれ、もしかして僕、全世界から指名手配じゃね?


 人類のためにやるのにまさかの悪役。いやはや、本当に人生ままならないや。弓兵エミヤんもびっくり。




「とは言え、正直どうにかする目星はついたのだけれど」


『なにをブツブツと言っているのだ。しかし、ふむ。この世界の仕組みに気付いたというのか』


「まあそういうこと。さて、あんたがオイタする前に手は打たせてもらう。『空間隔絶』」


『ぬっ?』




 今まで目に映っていた、住民たちがこいつに「へへーっ」ってやっている姿が、にじむように掻き消える。風景だけはそのまま、たいまつの赤々とした灯に照らされた、港町の砂浜に立っている。


 僕が使ったのは、空間の座標をズラし、使用者と対象だけを異次元に強制移動させる荒業だ。詳しい理論は僕も分からん。ミュールに聞いてくれ。


 つまり今現在、ここには僕と神しかいない。さすがに、信者どもに囲まれたあの状況でコイツに「この男は魔物だ!やってしまえ!!」みたいなこと言われたらやばかった。


 あとはウサギちゃんから野郎を引きずり出して、フルボッコ☆タイムです。




『ちっ、小癪な』


「化けの皮が剥がれてるぜ、自称カミサマ。今更だけどね」


『……まあ、ちょうどいい。悠久の時を経て、我は更なる力を手に入れた!あのときの屈辱、今晴らさせてもらうぞ!!』




 言うなり、黒ウサギちゃん(便宜上そうしておく)が僕に突っ込んでくる。視界で捉えられないほどの速度だが、あいにくと僕はそんな相手との経験には事欠かなかった。凡人が超人と戦うには、相応の努力が必要だったとだけ言っておこう。


 腕に魔法陣を出現させた黒ウサギちゃんは、僕の胸に向かって右腕を突き出す。魔法陣の効果か、推進力を得た右ストレートは、音を置いていくほどの速さで僕の胸に吸い込まれていく……が、僕もさすがに黙ってやられるわけがない。


 相手の腕にちょうどいいタイミングで手を当て、体ごと回転して攻撃を受け流す。目に見えないから、勘頼りだ。


 黒ウサギちゃんが凄まじい勢いを殺さずに振り切ってくれたため、多少よろけた。そこを見逃せるほど、僕は甘くない。


 がら空きのわき腹に手を当て、どっかの筋肉バカに教わった技を思い出す。確か……こうだったはず!


 足を踏み込み、そこから生まれる螺旋状のエネルギーを腰に伝え、肩に伝え、腕に伝え、手のひらに伝え、勢いよく捻りながら押し出す……ッ!




「はっ!」


『ごっふううぅぅ!?』




 鋭くかけた掛け声と共に、黒ウサギちゃんのわき腹に掌底。体全てを使って放たれた一撃は、綺麗に黒ウサギちゃんにクリーンヒットした。


 0距離からの殴打とは思えない衝撃に、黒ウサギちゃんは何が起きたのかも分からずに吹き飛んだ。口の端から、血が少したれている。


 しかし、なんとまぁ……ここまでとは思わなかった。まさか、魔法の攻撃力だけじゃなく、身体能力・・・・まで上昇しているとは。


 力を長年溜め込んできた相手だが、感覚的に相手の動きが分かる。目に見えるんじゃなくて、分かるんだ。


 奴自体の強さは、大体魔王よりも若干弱いくらいだ。いや、ウサギちゃんという器に入って、さらにもう一段階弱体化している、か。




『ぐうぅ……!やってくれたな!!ただで済むと、思うなよ……ッ!』


「じゃあ、その器から出たら?あんたからしたらやりにくいでしょ」


『ふ、ふふふ……なるほど、貴様はこの器が死ぬのは避けたいと見える。ならば!貴様がこれ以上余計なことをすると言うのならば、我はこの器を壊してくれよう!!』




 そういって、黒ウサギちゃんは、長く変化させた爪を、自らの喉へ突きつけた。ありていに言う人質だ。実際、ウサギちゃんとは少し前に知り合っただけで、ただの知り合い。仲間ですらない彼女は、僕なら簡単に切り捨てることだって出来るんだけど。




「おい、おいおいおい、生言ってんじゃ……ねぇよ」




 外道すぎるだろ、こいつ。汚い、さすが神(笑)汚い。


 こうやってふざけてはいるが、実は僕、ぶち切れちゃってます。いやね、さすがにこれには腹に据えかねるものがあるわけですよ。


 魔王のときはまだ、矜持とか礼儀とかはしっかりしてた、一本筋の通ったやつだった。世界を統べるとかイタイこと全力でやっちゃった迷惑野郎だったけど。


 でもさ、5年間決死の覚悟で戦って、ようやく魔王を打倒した結果がコレかよ!!




「や る せ ね え ぇ ぇ !!」


『ぬおおぉっ!?』




 気当たりというものをご存知だろうか?一般的に言う殺気などで、相手を威圧して「蛇ににらまれたカエル」状態にするやつだ。


 それを魔力を大放出することで、擬似的にだが起こすことができる。これは、ゴースト系の魔物やらが人に取り憑いたときに、引きずり出すのに有効なのだが……。




『ぐぅっ、なにが…………あれ!?』




 神にも有効みたいです。しかも、展開について行けずに「あれ!?」とか言っちゃってるし。


 気当たりで、神はウサギちゃんからトゥルンって出てきた。いや、実際はズアアアァァ!って感じだったけど、すごいあっさり出てきたから。スッと、ウサギちゃんの瞳の色が、元の赤に変わる。


 神が体から抜けたことで、気を失ったようだ。ウサギちゃんはその場に崩れ落ちた。


 現れた本体は、まさに醜悪の一言。黒くて、なんかグチョグチョウネウネって感じだ。オルゴデ〇ーラ最終形態よりキモい。大きさはありえないほどデカく、明らかにこの前の竜種より大きい。大体、10メートルほどか。


 ぺいっと弾き出されたというのもおこがましいがなんかプルプル震えている。……せめて、最後まで悪役らしい態度は保って欲しかった。なんだよ、魔王に勝って喜んでた自分が、すげぇ恥ずかしいじゃんか……ッ!




『ぬぐぐ……!』


「おら、それで本来の力出せるんだろ?死力を尽くせ。あるいはこの身に」


『ち、チクショー!やったらー!!』


「最後まで言わせろよ!!」




 もう、最初の頃が見る影もない神は、僕に向かって飛びかかってくる。なんか氷の矢とか炎の剣とか飛んでくるが、全て半身になってかわす。


 残り5メートルほどの地点で、神が腕……というより触手を伸ばしてくる。槍のように尖った切っ先は、刺されば確実に命を奪うだろう。


 その触手をこれまた半身になってかわし、すれ違いざまに剣を抜きつつ切り落とす。足は、未だ止めない。




『ぐ、おぉ……』


「『シルヴァリオン』……4属性纏装てんそう!」




 残り2メートル。相棒である魔剣シルヴァリオンに、炎・水・地・風の4属性を纏わせる。これが、今現在で僕にできる最強の魔法剣。


 残り0.5メートル。苦し紛れに放ってきた電撃をあえて受けながら、高く飛び上がった。いてぇ。


 準備完了の魔剣を、大上段で頭上に構える。落下が始まったと同時に振り下ろし、気合と共に神を切り裂く。




「塵も残すなああぁぁっ!!」




 ――――魔法剣『フレア』




『ぬおおぉぉ!?』




 4色の光が、神を中心に迸った。普段より、遥かに強い光。頭から真っ二つにされた神は、体の端から砂が崩れるようにサラサラと消えていく。口(?)を大きく開け、天を仰いだまま、硬直して動かない。


 剣から放たれた光は、ちゃんと神を滅せたようだ。通常の魔法剣は、剣がうっすら光るくらいなんだけど……。ウサギちゃんも、無事みたいだ。これで、今回の騒動は全部終わった。かも。




「はぁ……やっちった」




 この町の人々から希望を奪ったことに対してか、あまり多用するなと言われていた技に対してか、はたまた別の理由でか。


 自分にも判別できないけど、一言呟き、満天の星空を1人で眺める。


 神を殺して感じるのは、虚しさだけだった。

とりあえず序盤のボス、撃破。

なにげに苦戦せず、あっさり勝っちゃったリツくん。最強も伊達じゃないですね。

時々こんな風に、大一番ではリツ君が本気出します。徐々に口調が汚くなっていったリツくん、ぶち切れですねw


さて、これで予定していた一章の山が終わりました。残り2、3話で二章にうつれるかと。

二章では、皆様お待ちかねの……おっと、ではまた!

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