好きってなんだろう?
お風呂から上がって髪を乾かしてる時だ。後ろからちょこんと月華ちゃんが覗いてる。
「かまってちゃんだなーと」
ドライヤーの音で聞こえないくらいの音量で言ってみる。
私がなんて言ったか気になってるのか目をぱちくりさせている。
そんな様子に頬が緩む。
陽奈先輩はドライヤーしながらこっちをチラッと見て何か呟いた。何を言ったかは分からなかったけど、微笑んでるのが見えて私は凄く安心した。
……先輩も私の事好きだったらいいのになって。
ほんの僅かな期待を込めて、私もドライヤーで消えるくらいの声で呟いてみる。
「先輩…私と付き合って」
私はその声が聞こえてしまった。
……気まずい。とても気まずい。
今日はこの後ご飯を食べて寝るだけなのに。ご飯まであと1時間もある。
どうしよう。
困惑した表情の月華ちゃんを見たら少し安心する。
うーんと、声をかけるタイミングを伺ってたら目が合った。
「ごめん聞こえちゃったんだよね。」
「……本気なんですよ。これでも。」
まあそうだよね聞こえないつもりでも勇気いるだろうし。
私のどこがそんなに好きなんだろう?私が月華ちゃんを好きならまだ分かるよ。可愛いしいい子だし部員集めてくれるし。
「いつからそんなに好きなの?」
「先輩が泣いていた時です。去年の県大会の後グラウンドの近くの公園で。」
えっ、どういうこと?
先輩だと思ってたのは……月華ちゃん?
……混乱する。
「大会の後、泣いていた先輩を慰めてからです。それがきっかけでした。」
覚えてる。今まで菜月先輩だと思ってた。
綺麗な黒髪が目を隠してても見えたから。
泣いてる私を慰めてその後も、何もなかったみたいに接してくれて。
それは全部月華ちゃんだったんだ。
「その時まで先輩は憧れだったんです。なんでも1人でできて完璧だと思ってた、けど誰が側にいなきゃだめなんだって思ってどんどん…その好きになったんです。私が側にいたいって。」
私は菜月先輩だと勘違いしてた。菜月先輩にはずっとお礼を言ってた。
菜月先輩の事が好きだと思った事もあった。
でも月華ちゃんって知った途端に、月華ちゃんが私の中に染み込んで来るような感覚になった。
「先輩?無視はちょっと傷つきます。」
悲しそうな顔を見て私は我にかえる。
「ごめんね、そんなに思って貰えてると思わなくて。」
泣いてる私を弱い私を見ても側にいてくれる人。月華ちゃんは、そんな素敵な人なんだね。
「先輩キスしましょう。見つめられたら……私。」
月華ちゃん相変わらず大胆だよ……
でも少しドキドキするのは秘密だ。
「先輩もう可愛すぎます。」そう言って私を持ち上げベットにちょこんと座らせられた。
普段月華ちゃんが寝ている2段ベッドの下にそっと寝かされた。
「あの何するつもり月華ちゃん?」
「陽奈先輩を私だけの陽奈ちゃんにします。」
「あの抵抗するからね?」
「先輩は優しいから抵抗しませんよ。後輩に攻撃魔法撃てる訳がありません。」バレてる。
月華ちゃんはいきなり私の顎に手をかける。
「あのさ!!良くないよ。」
「大丈夫だよ優しくするから」妙に慣れてる様な言い方で少し嫌な気持ちになる。
……嫉妬とかじゃないからね。
体を起こそうとしても全く動けない。
「私の事好きにしては、強引すぎない?」月華ちゃんが無理矢理やってる事を、交渉材料にしてみる。
顔を近づけてくる。前キスした時のことを思い出し。隙があるかもと考えた。
そっとキスされた。頬を染めた月華ちゃんは魅力的で、少し私も心が揺れそうになるが必死に抑えて、月華ちゃんから脱出する作戦を実行する。
「先輩…せんぱい」甘い声に洗い息づかいで私は狂いそうになりながら目を閉じて待つ。
唇が触れた瞬間、そっと重ねるように寄せてみた。素直に応じた。
「よっと」
月華ちゃんが油断した瞬間私は、体を横に滑らせ月華ちゃんをそっと抱き寄せ。私と位置を入れ替えた。
「抜け出せたよ」
ふふんと言いたくなるくらい作戦通りだったが。
「先輩好き」
月華ちゃんはあまりにも魅力的に見える。
私も、少しづつ、好きになっているのかもしれない。
私は気持ちが昂り月華ちゃんにそっとキスをしてしまう。
ちょうどその時、チャイムがなった。夕食の時間だ。
月華ちゃんは慌てて私を振り払い足早に部屋から出る。
「……月華ちゃん。」
私はダメダメだな。好きになるなんて百年早かった。




