今は考えない。
月華ちゃんとお家デートすることにした。
何をしたらいいかなんて、何もわからない。
今日は、ずっと二人でいたい。
それより先のことは、今は考えなかった。
月華ちゃんは、朝は毎日パンを食べる。
隣で、私も真似してパンを食べる。
食べるのが早くて、リスみたいで、月華ちゃんだなって。
心があったかくなる。
「お家デートって、何するの?」
月華ちゃんがお皿を洗ってくれているのを、後ろから抱きしめながら聞く。
「多分、こんな感じじゃないですかね」
「じゃあ、私、お家デートの才能あるかも」
「先輩、動きづらいですよ」
月華ちゃんはそう言うけど、声が笑っていて、私は抱きしめる手をさらに固める。
「今日は、月華って呼び捨てにしたい」
「全然、今日だけじゃなくてもいいですよ?」
「ううん、恥ずかしいから、今日だけ」
「月華も、ひなでいいからね」
「ひ……ひな、好きだよ」
顔を赤くして、こちらをうかがう様子が、あまりにも可愛くて、思わず抱きしめる。
「月華、大好き」
お家デート、最高かもしれない。
私は、ここ数日の距離を埋めるみたいに、ずっとくっついて、布団を洗濯したり、掃除したりした。
あっという間に時間が経つ。
「お昼ご飯は、私が作るね」
「私も、何か手伝います」
「大丈夫だよ。昨日、色々してくれたお礼」
「月華は、座って待ってて」
昨日のお礼と、私の愛情を込めて、一生懸命ご飯を作る。
冷蔵庫には、余ったにんじんとじゃがいも、鶏胸肉くらいしかなかった。
二人分なら、カレーが作れるかな。
「ふんふん。上出来」
バターチキンカレーを作った。
味見の結果は、大満足だ。
「月華、お待たせ」
「すごい。美味しそう」
月華ちゃんは、ご飯もカレーも、パクパク食べてくれる。
何回も「美味しい」って言ってくれる。
それが、すごく幸せで、嬉しかった。
ご飯も食べ終わって、やることがなくなった私たちは、スマホで映画を見ることにした。
「これとか、なかなか面白そう」
「時間もありますし、とりあえず見てみますか」
テレビがないとはいえ、小さい画面を共有してみると、距離が自然と縮まる。
気がつけば、ほとんどくっついている。
エアコンもついているのに、なんだか暑い。
「この人、なんか怪しくないですか?」
「なんか、犯人な気がするよね」
画面の音より、月華ちゃんの呼吸が近くて、
私の心臓がうるさくて、
ほとんど内容に集中できていなかった。
「映画、面白くないですか?」
月華ちゃんは、優しい目で私を見る。
「ううん、ぼーっとしちゃってた。ごめんね」
こんなに近いと、月華ちゃんに触れたくなる。
どこに触れたいのかは、考えないようにする。
この時間を壊したくなくて、結局、そのままだった。
あれから数日。
先輩の距離は、ずっと近くなった。
でも、触れてくることはなかった。
あの日は、先輩が風邪をひいた直後だったから、私も我慢していた。
でも、もう何日も経っている……
部活は楽しい。
先輩が楽しそうにしているから。
でも、チーム練習の時、先輩はどこか遠くを見ている。
先輩が、そういう性格だって分かっている。
先輩は、変わっていない。
それなのに。
近づいたはずの距離が、
練習の時だけ、遠く感じられた。




