私はイライラしている。
私は珍しく早く起きた。
月華ちゃんも起きてた。
やっぱ朝早いな。
時計を見たらまだ4時半だ。
昨日は寝るのが、遅かったのに。
「おはよ月華ちゃん」
「おはようのちゅーがほしいです。」
「……んーと?」
「昨日デートだったのに、
キスできなかったじゃないですか。」
まあ確かに。変なやつに絡まれたせいだ。
自分でやったから何も言えないのだが、キモいキスを目撃しているせいでキスの気分じゃ無かった。
「キス以外でもいい?」
「えっちでもいいんですか。」
朝から凄いと思う月華ちゃん。
「まあいいよ。ちょっと魔法の練習してくるからそのあとね。」
月華ちゃんに寂しい思いをさせたので、
少しくらいならいいかと思った。
「私も練習行きます。」
真剣な目つきで言う。
トレーニングルームで魔法の精度を上げる練習をする。
昨日は、私の魔法の精度が悪く、自分にも傷がついた。
そのせいで、月華ちゃんを心配させてしまった。
私の落ち度だ。
1時間くらい練習しただろうか、ふと月華ちゃんを見ると、なんだか焦っているように見える。
早く強くならないと、そんな感じだ。
「そろそろ戻らないと学校遅れちゃうよ。」
「はい!」
月華と陽奈は寮に戻り、学校に向かう準備をする。
あれなんか忘れてない?
私は何か大事な事を忘れてる気がする。
「先輩、私何か忘れてる気がするんです。」
「んーなんだろね。」
プロテインを飲んで、パンを食べながら、適当に返事をしてる。
そんな何でもない姿も先輩がやると、貴族の朝食に見えるのだ。
美しいな。
食べ終わったのか着替え始める先輩。
それで思い出した。
「先輩……えっちしてない。」
「そーだね。」
「もう時間ないですよ。」
「そーだね。」
なんか適当だ。ちょっとむかつく。
「私は遅刻してでも、えっちしたいです。」
「それはまずいから辞めてね?」
「じゃあ代わりにおっぱい触ります。」
「いや、ちょっと待って待って待って!!」
先輩にくっついても、心のモヤは晴れなかった。
月華ちゃんは変態が過ぎる。
おかげで本当にギリギリだ。
ちゃんと間に合った。
偉いぞ、私。
「やっぱ東雲さん凄いね。」「本当に凄い。」
「優秀な戦闘魔法部のエースだけある。」
教室に着くと、なぜか私の苗字が聞こえた気がするのは気のせいだろうか。
自意識過剰ってやつだ。気にするだけ無駄。
「ホームルーム始めるぞー。
そういえば、東雲お手柄だったな。」
なんの事だ。先生まで私の苗字を読んだ気がする。
「あの……なんの話ですか?」
「連続誘拐犯を捕まえて拘束したやつだよ。
ニュースでやってたじゃないか。」
そんな事……やってない。なんの話だ。
「すいません部屋にテレビが無くて見てないです。」
「見せてやってくれ。」
先生がそう言って、クラスの生徒が私にニュースを見せてくれる。
昨日の4人組じゃん。
しかも"戦闘魔法大会元MVPが拘束身柄確保"なんて記事だ。
私の写真がバッチリ写っている。
終わった、門限破ったのバレバレじゃん。
クラスの前で門限破りを言うのは可哀想と思ったのか、先生はホームルームでは言わないでくれた。
昼休みになり食堂に向かう。
その途中もヒソヒソと何かを言われ、
私はイライラしていた。
今日は部活もないし。
授業が終わったらトレーニングルームに行こう。
そう思っていたのだが、
「……今日はメンテナス?」
私は絶望していた。
この行き場のないストレス。
寮に戻れば門限破りを咎められる。
ただやる事もないので寮に帰ることにした。
堂々と入る。
案外怒られない方法だ。
この方法はなぜか見事成功したのだ。
「たっだいまー」
テンションが少しあがり上機嫌に帰りを報告する。
「おかえり先輩。」
逆に月華ちゃんはテンションが低い。
やっぱ部活もなければトレーニングルームも使えないとなれば、誰でもしんどいものだ。
「気持ちは分かるよ。」
そう言って肩をトントンと叩く。
鋭い目つきで、私を見つめて月華ちゃんは口を開ける。
「先輩が無茶するのを黙って見てろって言うんですか。昨日の人たちやばい連中だったんですよ。」
「……私はピンピンしてるよ?
それに強く無かったよ。」
「大会に出れないと思って、攻撃魔法を縛ってたのはきつかったけどね。」
言ってから気づく。
心配してくれてる人相手に、
言わなくていい事もあるって事だ。
「私も一緒なら傷つかないで済んだんじゃないんですか?なんで頼ってくれないんですか?」
私は月華ちゃんが居なかったら、戦う事も一生懸命逃げ回り時間を稼ぐ事もしない。
そんな事言われても困る。
「月華ちゃんは、私の気持ち分かる?」
「痛いくらい伝わってますよ。だから心配なんです。」伝わってるならよかった。
私は月華ちゃんが大好きだから戦ったのに。
私が責められるなんて、おかしい。
「そういえば朝の約束今からでもいい?」
「なんで急に?あっ。」
返事を聞く前に押し倒した。
行き場のないストレス。
月華ちゃんに信頼されてない私。
全部ムカつく。
月華ちゃんに、ぶつける事にした。
「先輩……」
そんな顔で見ないでほしい。




