白凪月華
私は不安だった。
陽奈先輩は昔からそうだ。初めて試合を見に行った時。先輩は高校一年生にしてMVPを取った。
初めて戦闘魔法の試合を見た私ですら分かる。
圧倒的な強さだった。
大会が終わり表彰され部員の家族とか、先生とか沢山の人が集まる打ち上げが開催され。
私も参加させて貰ったのだ。
私はあの人を探していた。とってもカッコよくて、誰よりも強くて、とても可愛い人を。
「お姉ちゃんあの人はいないの?」
「あの人ってどの人だ?」
「MVPになった人。」
「ああ、外にいるよ多分。」
外に出ると、秋風が立つ中、長い髪をなびかせどこか遠くを見ている。
「君もあの空気は苦手だった?」
「は、はい。」
そんな事は無かったけど話しかけられて咄嗟に返事をしてしまう。
「気持ち分かるよ。あの場に居たくないんだ、勝ってもないのに喜んで、もう飽き飽きしてるよ。地区大会も県大会勝った時もそうだった。本番はこれからなのに。」
なぜだか飢えているような、さっきまであんな闘いをしていたのに。
「悔しかったんですか?」
「そうなのかな。私がやれることはやり切ったつもりだったんだけど。」
自分でもよく分かってなさそうだった。
そこから無言が続き、彼女を見る。
茶色か金色か、夕日に照らされて分からないけど、私と同い年かそれより下に見える童顔。綺麗な肌。綺麗な目。
それなのに、お姉ちゃんやお母さんよりも年上にも感じる圧倒的な雰囲気。
私は一目惚れをした。
彼女と目が合うとドキドキして息ができなくなる。
ちゃんと吸って吐いて。吐けない。あれやばいかも。
視界がだんだん白くなるようなそんな感じだった。
「はあ。はあ。これであってるんだよな。」
目を覚ますとすぐそこにあの人が居た。
「あ、生き返った。」
「あああののののなんでキスしてるんですか?」
大慌てで距離を取る。
まだ口の中に自分ものじゃない唾液を感じる。
「君が急に倒れるから慌てて支えて、呼吸してないのに気づいて、人工呼吸したってわけ。大人呼びに行くにもお店からは少し離れて居たし1人にするわけに行かないから。」
こんなに焦っているのは私だけなのか、ファーストキスだったのに……。
この人はもう沢山経験があるのか落ち着いている。
「とにかく無事で良かったよ。」
そう言って手を引かれる。
「勝手に飲むのはいいけどさ、子供が倒れてるのに気づかないって監督責任ちゃんとできてるの?」
大人達は急になんだみたいな顔をしてるが、この人は論理的に詰めた。
だんだんとお祝いの雰囲気では無くなり。
この会はお開きになった。私が倒れたせいだ。
「ごめんなさい私のせいで」
「いいよ気にしなくて、私も嫌々だったしね。」
「良かったらお名前教えてくれませんか?」
「東雲陽奈だよ。あなたは?」
「白凪月華です。」
夢を見てた、懐かしい夢。出会ったばかりの頃の夢。
昨日の先輩はカッコよかった。でも昔の危うさがあった。
誰も陽奈には敵わない。年がいくら離れててもどんなに強くても敵わないそんな人だ。
陽奈先輩の事をお姉ちゃんに聞いた時はこんな事を言っていた。
実際そうだと思った。
私がみた先輩は、ずっと強かったからだ。
去年、先輩は負けた。
一昨年よりもチームと連携が取れワンマンではなく、パフォーマンスもとんでも無かった。
相手も去年のまま負けるわけにいかず、結束するというほとんどズルをして先輩を集中的に狙い。
それでも先輩は諦めず限界まで闘い結果的に大会の撃破数はトップだった。
先輩は泣いていた。私が支えると決めた。1人で背負わせないって。お姉ちゃんに頼み込み。私がいない間もずっと1人にしないで貰った。先輩が危なくないように今度こそ勝って、一緒に喜べるように。
そして、戦う事より私を選んでもらう。
私に堕ちてもらう。




