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約束


 タリバーディンが魔物を連れて大挙してきたあの領都の襲撃騒ぎが終わってから早半月が経った。


 主であるタリバーディンがいなくなったことで魔物達は色が元に戻り、一心不乱に城壁を飛び越えようとしていたのが嘘のように散り散りになって逃げ失せていた。


 下手に生態系が乱れてしまわぬよう魔物達を掃討したりしているうちに、あっという間に時間が経ってしまった。


 もちろん、それ以外にも色々なことをやらせてもらった。


 今までは下手にゲーム内の正史と食い違わないようにとなるべく交流を減らしていたけれど、今回の一件が終わったのでもはや自重する必要もない。


 なので父上やルクス達に俺達のことを話してから、塩の利権や海の使用に関して各方面で問題が起きないように色々と調整を進めながら交流を増やしていくという形で合意が取れた。


 ダート大森林の大規模な開拓が進んでいたり、俺が獣人や魔人達の主になっていると聞いた時は父上もさすがに驚いていた。


 たしかに一応は自分の支配領域である領地に魔人が住んでいるとは想像していなかったのだろう。

 まあそれ以外にも色々なことがあった。


 人間の街が珍しいからとカーミラがはしゃぎすぎて酒屋を出禁になったり、人のことを信じすぎるリリィがあわや男達に拉致されそうになっていたり、以前のように虐めようとしていたメイド達を完全に返り討ちにしたララが過去のトラウマを完璧に克服してみせたりと……とても半月とは思えないほどに濃密な時間を過ごさせてもらった。


 そして今日、俺達は領都を後にする。

 けれどその前にやらなくちゃいけないことがある。

 それはかねてより皆としていた約束を果たすため。


 俺がこの世界で新たに守ることを決めた女の子達とする、聖なる儀式。

 そう、今日俺達は――領都フレイベルの教会で、結婚式を挙げるのだ。







「えー、それでは新郎のヴァル様。あなたは新婦達を心から愛し、病める時も健やかなる時も彼女達と共にあることを誓いますか?」


「誓います」


 前世の記憶を頼りにオーダーメイドで作った黒のスーツ。

 貴族用の服には慣れていたはずなのだが、この二年間まともにこういう服を着てこなかったせいか、なんだか妙に着慣れない感じがする。


 そわそわとしながら隣を向くと、そこには白無垢の花嫁衣装に身を包んだ、俺の嫁達の姿があった。


「新婦のララ・ナナ・カーミラ・リリィ。あなたは新郎を心から愛し、病める時も健やかなる時も共にあることを誓いますか?」


「「「「誓います!!」」」」


 彼女達のところへ向かい、ヴェールを一枚また一枚と剥いていく。

 そして口づけを重ねると、教会全体を拍手が鳴り響いた。


 リーンゴーンと鳴り響く、祝福の鐘の音。

 空には火魔法が打ち上がっており、ステンドグラス越しにもその明るさが見て取れた。


 ゆっくりと、彼女達と披露宴の中を歩いていく。

 敢えて大回りをしながらゆっくりと、この瞬間を皆の網膜に焼き付けるように。


「なんだか……夢のようです」


「ああ、俺もまさかここを出る時には、こんなことになるとは思っていなかった」


 ララの言葉に、頷きを返す。

 正直なところ、自信があったかと言われれば嘘になる。


 ここを出る時はまだ強くなることに必死で、そこから先のことを考える余裕なんてものはなかった。


 ゲームの知識を使ってなんとかして皆を守らなければと精一杯だったからな。

 けれどこれからは違う。


「ふふん、どうした? 妾の花嫁衣装に見とれておったのか?」


「……ああ、本当に綺麗だよ。カーミラ」


「なっ、ななな……そ、そんなにストレートな言葉を投げつけてくるでない!」


 他の子達と比べると露出の多いミニスカートのドレスを身につけているカーミラは、顔を真っ赤にしながら俺の手を取った。

 いつも堂々としている彼女が時たま見せる女の子らしいところが、俺は大好きだった。


「私はどうですか、ヴァルさん?」


「もちろんリリィも綺麗だよ。清楚系っていうか……純真な感じがする」


「私は! 私はどうですか、ヴァルさん!」


「ナナは綺麗っていうより、かわいい寄りかな。今後に期待」


「がびーん! ナナのオトナな魅力に気付かないとは、ヴァルの目は節穴なのです!」


 ナナとリリィも今日はいつもとは違う、真っ白なドレスに身を包んでいる。

 俺には、何よりも守らなくちゃいけないものができた。


 自分よりも大切にしようと思えるだけの女の子達が。

 それに彼女達と俺を、慕ってついてきてくれる皆のためにも、俺はこれからも頑張らなくちゃいけない。


 もちろん父上やルクスも大切だけど……とりあえずの山場を超えた。

 ここから先、俺は俺の幸せのために生きても、バチは当たらないだろう。


 少し離れたところには、父上の姿が見えた。

 その姿を見ると、半月ほど前にしたやりとりが脳裏に浮かんだ……。


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